2023.05.13
朝日新聞のロングインタビュー(10日付)、ジュンク堂書店の福嶋聡さんの書店の役割についての話に感銘を受けました。
著作権のことがあるので(朝日新聞のデジタル版では有料記事です)、あまり引用できませんし、書店の役割について多岐にわたって示唆に富んだ話なので、とても簡単にまとめられませんが、特に印象深かった点を。
売れる本ばかり売っていては、「社会の閉塞に風穴をあけるような新しい本を発見することはできない」、「今ある社会の欲望や格差の増幅器にしかならない」と言い、多くの本を置ける大型書店は、社会の「変革器」であるべきと話しています。
ネットでの書籍の購入については、ピンポイントで検索するので「世界が狭くなる」、それに対して書店、本屋では「知らなかったこと、予想もしなかったこと、嫌いなことが入ってくる。迷い込む体験ができる」ととらえています。
この部分は、新聞での情報収集とインターネットでの情報収集はどう異なるのかという説明と共通していると感じました。インターネットは求める情報がわかっている時にそれを探すのには便利(ピンポイントでの検索)、新聞は一覧性という強みで、ページをめくりながら見出しを追うだけでも多様な情報に接することができる、やはり「知らなかったこと、予想もしなかったこと、そして嫌いなこと」も入ってくるわけです。
新聞記者時代、学校にお邪魔して新聞について話をするとき、ネット情報と新聞を読むことの違いとして、インターネットは好きなものばかり食べる食事、新聞はいろいろな「おかず」のある幕の内弁当、定食、と喩えたりしました。好きなものばかり食べる、偏食はよくないですよ、と言いたいわけです。
私自身も新聞などで紹介されていたり広告をみてこの本、と決めた時は、やはりネットで注文はしてしまいます。とはいえ、できるだけリアルで、書店に足を運ぶようにしてはきました。この記事、福嶋さんの話を読んで、その思いを強くしています。
昭和の終わりの時期に京都で記者をしていた際、学生の街、個性的な書店・古書店がたくさんあった京都に大型書店のジュンク堂が出店するということで、当時の社長さんにインタビューしました(ホームページを拝見すると1988年、昭和63年に京都店開業、とあります)。
その後、ジュンク堂が東京にも大型店を出し、店での本の並べ方・見せ方、棚のつくり方が独特で、またお客がゆっくりと本を探し、内容を確認できるよう店内にお客さんが自由に座れるイスを並べるといった試みなどが話題にもなり、足を運びました(今でももちろん出かけていますが)。
ジュンク堂書店さんの公式ホームページはこちら
「那覇の市場で古本屋 ひょっこり始めた〈ウララ〉の日々」(宇田智子、 ボーダーインク)
このジュンク堂書店に勤めていて退職、沖縄・那覇の公設市場に隣接する場所に小さな古本屋を開いた筆者が、店を開くに至ったいきさつや沖縄の人たちとの交流などを語ります。購入記録は2013年8月、もちろん沖縄に出かけた際、立ち寄らせていただきました。