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BLOG校長ブログ

2023.10.12

いままた松本清張 その①

えっ、なんで今さら松本清張なのと言われるでしょうね。発端は夏休み前、『天保図録』の文庫本の新聞広告が目にとまったことです。著者松本清張の名前が大きく書かれています。そこがウリですものね。「天保」とあるので江戸時代を舞台にした小説だろう、確かずっと以前に読んでいるはず、と考えめぐらせ、ためらっていたのですが。

実家の書棚でやはり江戸時代を舞台にした『かげろう絵図』は確認したものの、『天保図録』は見当たらない。文庫本で計4冊の長編ながら、松本清張の作品は読みやすいですし、思い切って購入しました。先に結論ですが、『天保図録』は結局読んでいなかった、時代背景、登場人物で『かげろう絵図』の続編と位置付けられている作品でした。

『天保図録』は週刊朝日で1962年(昭和37年)4月から64年12月の間、連載された時代小説です。後に朝日新聞社から単行本(上中下)で発刊され、さらには朝日文芸文庫でも発刊され、また「松本清張全集」にも収められているわけですが、改めてネット通販で確認すると、当然ながら古本での購入になります。このたびは、春陽文庫が装丁も新たに全4巻で発行した、ということでした。その新聞広告でした。

さて『天保図録』の内容ですが、教科書でもおなじみ、江戸の三大改革(享保の改革、寛政の改革、天保の改革)の最後、天保の改革期がタイトル通りその舞台、改革を推進した老中水野忠邦、腹心の鳥居耀蔵が江戸の町奉行として辣腕を振るい、部下を使っての陰謀にも手を染めます。もちろんこれに立ち向かう旗本や町人が出てきて、ドラマが展開するわけです。後に映画化されているようです(DVD化もされていました)

松本清張が少年青年期を過ごした北九州市に同市立松本清張記念館があります。10年以上前になりますが一度、訪れています。小倉城のある公園の一角に位置し、東京にあった松本清張の自宅書斎(仕事場)をそのまま移して展示し、作品が紹介されています。

また、研究者を招いてのシンポジウムを開催したり研究雑誌を発行したりしています。その記念館発行の「館報 第22号」(2006年8月)は『天保図録』を小特集しています(PDF版がインターネットで公開されていました)。

博物館学芸員の方の作品紹介から引用します。

「家斉の治下にあった五十年間の浪費政策の影響で、徳川幕府内には賄賂が横行し、社会・文化は奢侈(しゃし)を極めていた」
「貨幣経済の発達と共に町人ブルジョアジーが誕生し、武士階級は困窮し、幕府の権威も失われつつあった」
「明治維新の二十数年前、幕藩体制のひずみが顕在化した時代を、清張は多彩な登場人物を操り縦横無尽に描き出す」
「かげろう絵図に続く大作である」

天保図録に先立つ『かげろう絵図』。こちらは1958年5月~59年10月、東京新聞夕刊に連載された作品、こちらは文庫上下巻でしたが、つい勢いで、『天保図録』に続けて再読してしまいました。

それにしてもこの『天保図録』、『砂の器』『球形の荒野』などの傑作、代表作を相次いで発表している時期に、これだけの大作を連載していたのですから、松本清張、やはりすごいです。

松本清張についての説明は、私など手に負えません。単なる推理作家を超えた幅広い分野で膨大な作品群があります。
松本清張記念館の公式ホームページに「松本清張について」というコーナーがあります。

松本清張記念館の公式ホームページはこちらから

春陽堂書店(春陽文庫)のホームページはこちら