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BLOG校長ブログ

2023.10.17

中国史を学ぶ おすすめ本②

『中華を生んだ遊牧民 鮮卑拓跋の歴史』の中で筆者の松下憲一さんは、中国の歴史を漢族と北方遊牧民との対立と融合とまとめるのですが、その「対立」を示すものが次々と打ち立てられる「王朝」、これが「覚えさせられる」国の名前になる。しかし松下さんが強調するのはむしろ「融合」です。

北方から遊牧民たちが現在の中国の中央部(「中原」などとも言います)に入ってきて国をつくる、そこには以前から住んでいる人たちがいるわけで、どうしても本拠地から離れるために少数派となる遊牧民の支配層が住民たちをスムーズに統治するためには、その文化やくらしを頭越しに否定するわけにはいかない、一方で統治される側も北方遊牧民の文化を取り入れていく。その結果、現在につながる中国の生活習慣の中には、実は北方遊牧民由来のものが相当あると紹介されています。

著書紹介の記事に「北魏を建国した」とあります。著作では「北魏にはじまる均田制は、隋唐をへて日本の班田収授となり、北魏の都洛陽は、隋唐の長安の基本形となり、さらに日本の平城京・平安京にも継承された」とされています。

仏像の日本への伝来の歴史の中でも北魏の仏像は重要な位置をしめているので、この点でも関心を持って読むことができました。

余談ではありますが

私の高校時代の世界史の授業は思い出すと中国史ばかりで、先生はたぶんそちらが専門だったのでしょう、均田制とかやたら詳しく話をしていたように記憶しています。その中で、純粋な漢民族なんてほとんど残っていない、といった趣旨の話がありました。漢民族とはという定義そのものが難しいので、けっこう乱暴な物言いだと今は思いますが、強いインパクトがありました。

戦争が続き(王朝が次々に代わり)多くの人が亡くなり、そして松下さんが書くように、中国史の半分を占める異民族王朝によって住民どうしが交わり、民族が「融合」していった結果は、「漢民族・・・」という思い出の先生の表現で説明できるようにも思えます。そうだとしたら、半世紀も前の話です、すごい先生でしたね、ただ、記憶は美化されがちなので、なんとも。

松下さんのこんな刺激的な著作に高校時代出会っていたら、高校の世界史ももっと前向きに学べたのに、などと言い訳したくなってしまいますが、決して世界史を嫌いになったわけではなく、ずっと本は読み続けていますよ。

例えば、中国の歴史というかアジアの歴史についての個人的なイチ推しは岡本隆司さん。

『世界史序説』 (ちくま新書、2018年)
『世界史とつなげて学ぶ 中国全史』(東洋経済新報社、2019年)
『歴史とはなにか 新しい「世界史」を求めて』(山川出版社、2021年)

岡本さんは中国史、特に清朝の歴史を専門とされているようですが、タイトルにあるように、狭い地域にとどまらない視野でアジア史を描こうという意欲が感じられます。「歴史とななにか」は鈴木薫さんとの共著。鈴木さんはオスマントルコの歴史の専門家で、本の紹介では、アジアの東西の専門家が文明、世界史を語り合う、とあります。

経歴をみると岡本さんは京都大学で東洋史学を学んでいます。そっか、貝塚茂樹、宮崎市定らアジア史、中国史で名を残す研究者を生んだ京都大学の東洋史研究を受け継いでいるのかしら。