2023.10.25
はまってしまって次々と読んできた警察・推理小説、その作家として黒川博行さんを思い出し、米澤穂信さんの近刊『可燃物』も紹介しました。その米澤さんの過去作品を調べたら代表作ともいえるこれがありました。
こちらも短編集。2014年の刊行で、その1年間に発刊されたミステリ作品のランキングで定評のある「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」の国内部門1位で史上初の3冠に輝いたと紹介されています。
これらのランキングはそれなりにチェックしていて、すぐに引きずられて購入することも多く、『満願』も読んだような気もするのですが、文庫本になっていて安価なので、えいっと購入してしまいました。
こちらは捜査一課の警部のように決まった主人公がいる短編集ではありませんでした。一部には警察官が出てきますが、外国で殺人事件を犯した商社員やフリーの記者、さらには弁護士が主役など、実に多彩な短編ばかりで結末も見事に描かれています(ミステリなので詳しくは書きません)
読んでいて、少し話の先が読めるような感覚もあったので、やはり「再読」なのかとも思ったのですが、「再読しても楽しめる、それでこそエンターテインメント小説」という黒川作品の時の「言い訳」を繰り返しておきます。
と、ここまで書いておいて実家の書棚で確認したら、『満願』の単行本、やっぱりありました。2014年3月の初版、11月になんと15刷の大ベストセラー、3冠達成もむべなるかな、です。ちなみに改めて購入した文庫本も19刷、ひえー。(ミステリランキングは年末に発表されるので、やはりそれを見て購入したのでしょう)
米澤さん、すでにキャリアの長い作家ですが、改めて「おそるべし」です。
『可燃物』では群馬県警とはっきりと名前が出てきます。黒川作品でも実際に存在する大阪府警が使われます(所轄署は架空です)。事件の起きる現場の地名が実在の地名ならば、捜査をする警察も実在の名前を使わないとちぐはぐです。つまり東京が舞台の推理小説となると、それは「警視庁」が出てこないと不自然なわけです。
一方で、警察捜査、あるいは警察署を舞台にした推理小説で、事件の起きる場所を架空の地方都市とするならば、「D県警」とか「F県警」とか仮名でいいわけで、そういった作品はたくさんあります。それだけに米澤さんがあえて群馬県警としたのは結構珍しいのではとも思います。
その群馬県警ということで連想したのが横山秀夫さんです。『クライマーズ・ハイ』『64(ロクヨン)』などの作品で知られる作家で、その警察捜査や警察官、刑事らの人間像の描き方は実にリアルです。というのも横山さんは群馬県の新聞社の記者をされていた方、警察取材もしていたわけで当然といえばその通りなのですが、作品では「群馬」は使わず仮名のケースが多い。ご自身がこのキャリアだからこそ仮名にしたのかもしれませんね。
新聞記者から警察ミステリ小説に転身というと、最近では堂場瞬一さんもいます。エッセイでは新潟で仕事をしていたと書いていたように記憶しているのですが、私が読んでいる限りでは、ご自身で新聞記者をしていたことはあまり触れていないようなので、どこの新聞社かは書きません。誰でも知っている全国紙です(毎日新聞社ではありません)。