2023.11.04
政治家と鉄道、あるいは新幹線となると、この人に触れないわけにはいきません。
「日本列島改造論」は田中角栄元首相の著書として1972年に発刊された政策提言集、実質は中央省庁の官僚が集まって政策をまとめたものということはよく知られていますが、首相就任時の田中人気もあって、政治家の書いた本としては異例ともいえるベストセラーになりました。
タイトルにあるように、列島全域をどう開発(改造)していくかという提案をしているのですが、その開発のカギをにぎるのが高速道路網であり高速鉄道網、全国を短時間で結ぶ交通ネットワークで人の行き来、物流を盛んにすることが開発を後押しすると考えたわけです。
高速鉄道網については、具体的にどの地方とどの地方を結ぶこのような路線、という例が多数示されました。田中首相の退陣、その後のロッキード事件で田中元首相が逮捕されたことなどもあってこの提言そのものも「無かった」かのようになっていきますが、実はここで示された高速鉄道網という考え方はその後も生き続けます。今日の新幹線網と見比べてみると・・・ということになるのです。
新幹線・高速鉄道と政治とのかかわりでは最近、イギリスからこんなニュースが伝わってきました。
10月初め、イギリスのスナク首相が同国内で進められている高速鉄道の建設について、費用の高騰を理由に縮小することを発表した、というのです。
「High Speed 2」を略した「HS2」と呼ばれる高速鉄道で、首都ロンドンから中部バーミンガムの間を時速400キロで結ぶ計画、2026年開業予定で、これが第一期。さらに北のマンチェスターなどとを結ぶ路線が第2期とされ、スナク首相はこの2期は着工すべきでないと表明したようです。
スナク首相率いる与党保守党は支持率下落の傾向にあり、来るべき選挙対策の色合いが強いようではありますが、どうなっていくのでしょうか。
これが他人事ではないのは、日本の東海道新幹線初代のゼロ系車両から新幹線車両の製造を手掛けてきた日立製作所がイギリスの高速鉄道車両の製造や保守を請け負っているからです。
世界に名だたる日本の新幹線を海外に「輸出」しようという動きは古くからあるのですが、新幹線と並び称されるフランスのTGV、さらに高速鉄道網が発達しているドイツなども高速鉄道システムそのものやその車両の輸出に力を入れており、日本の新幹線と競合することもしばしばなのです。
それだけにイギリスの高速鉄道の先行きは気がかりなところではありますが、ヨーロッパでは脱酸素社会の促進のために電気自動車の普及が図られ、また大量の化石燃料を使う航空機の使用を減らし鉄道を見直そうという動きがすすめられてもいます。注目されるところですね。