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BLOG校長ブログ

2023.11.06

レールの幅・ゲージ ① ―― 久しぶりの「鉄分」

最近、鉄道にかかわる気になるニュースがいくつかありました。「読み鉄」「歴史鉄」からさらに広がる話ですが、こういうところに関心を持つ「鉄ちゃん」もいるということで、おつきあいを。

9月に北朝鮮の最高指導者がロシアを訪れ、プーチン大統領と会いました。この時、北朝鮮から列車で国境を越えてロシア入りしました。外国訪問に列車を利用するのはこの最高指導者の一族の「伝統」で、それ自体に驚きはないのですが、そのことをとりあげた記事の中に「鉄ちゃん」ならニヤッとする部分があったのです。

列車ならたくさんの随行員が乗れますし、記事では、複数の列車を同時に走らせるとどの列車に最高指導者が乗っているかわからないという安全面の利点をあげていました。列車の「影武者」ですね。

ではこの列車、スムーズに国境を越えられたのか、もちろん両国は友好関係にありますし、VIPですから税関での申告や入国管理でのパスポートの提示もありません。ところが、北朝鮮国内では線路の老朽化が激しくて列車があまりスピードを出せない、そしてようやく国境に差し掛かった時、列車の台車交換に時間がかかった、というのです。

列車の「台車交換」といわれても、これは「鉄ちゃん」でないと何のこと、でしょう。

日本民営鉄道協会のホームページによります。

「台車」とは輪軸(車輪と車軸)・軸受・軸箱・駆動装置・基礎ブレーキ装置などを一体的に収め、車両の下に取り付けられている走行装置のこと。車両の下についている「車輪」と考えてください。鉄道は2本のレールの幅(軌間、ゲージ)が鉄道ごとに決まっています。当然そこを走る車両の「車輪」の幅はレールの幅に合わせてあります。ところが、北朝鮮の鉄道とロシアの鉄道の軌間・ゲージが異なっているのです。

ではどう解決するのか。シンプルに考えれば、北朝鮮国内では北朝鮮の列車で移動し、国境の駅でロシアの鉄道の列車に乗り換えればいいわけですが、それでは、北朝鮮から列車にいろいろなものを積んでいった意味がない(積み替えが大変です)、北朝鮮の車両には最高指導者の部屋もあるでしょうから、そこでずっと過ごしたいわけです。さらにロシアが用意する車両に対して信頼がおけるのかという気持ちもあるでしょう。

そこで報道にあるように、国境で「台車交換」をしたのです。つまり北朝鮮の車両の台車をロシア用の台車に交換する、具体的な作業内容までは書かれていませんが、北朝鮮の車両の車体部分だけをクレーンのようなもので持ち上げて、北朝鮮のゲージ用の台車をはずして、代わりにロシアのゲージ用の台車を結合させるという作業だと思われます。自動車のタイヤ交換する時に、ジャッキなどで車を持ち上げる、そんな感じですね。

どうしてこんな推測ができるのかというと、実はヨーロッパでも国によってゲージが異なり、国境を越えて動く列車でこのような作業が近年まで結構行われていたのです。

この作業を何両、あるいは十数両の車両で行うのですから、国境で時間がかかるのは当然ですよね。