2023.11.22
先日アメリカ・サンフランシスコで開かれたAPEC首脳会談関連のニュースの中で、思わずニンマリとする記事がありました。バイデン米大統領と習近平中国国家主席との会談などが大きく報じられる中だったので、気づかなかった方も多いかと。
習近平氏、米国との「パンダ外交」継続の意向 「友好の使者」
中国の習近平国家主席は15日、訪問先の米西部カリフォルニア州サンフランシスコで出席した夕食会のスピーチで「中国はジャイアントパンダの保護に関する米国との協力を継続する用意がある」と述べた。AP通信が報じた。米国では近年、パンダの新たな貸与がないまま中国への返還が相次いでおり、米国の動物園からパンダがいなくなる可能性が指摘されていた。習氏は米中友好の印として「パンダ外交」を継続する意向を示した形だ。
習氏は15日にバイデン米大統領と会談し、国防当局間の対話を再開させるなど、両国関係を安定化させることで一致している。AP通信によると、習氏はパンダを「中米両国民の友好の使者」と表現。「カリフォルニアの人々の期待に応え、友好関係を深めるために最善を尽くす」と述べた。中国が米国に新しいパンダを貸与することを示唆したものとみられている。
記事を読んだ後、「積読」の山の中からうまい具合にこの本が見つかりました。
こういう本があるんですよ。タイトルにひかれて購入したままでした。筆者の家永さんは東京女子大学の准教授。これに先立っての本格的な研究書『国宝の政治史 「中国」の故宮とパンダ』(東京大学出版会、2017年)もあることを知り購入しましたが(これから読みます)、この講談社の「メチエ」シリーズはけっこう硬派、重いテーマも一般向けにわかりやすく書かれているものが多く、この『パンダ』も知らなかったことが満載、勉強になりました。例えば
「二〇二二年四月現在、中国は一八ヵ国二二の動物園と繁殖協力のための協定を結び、パンダのペアを貸し出している。(略)中国国外で飼育されているパンダの総数は、出産や返還により増減するが、概ね六〇頭ほどになる」
「外交史」なので、野生種が中国でしか生息しないパンダ(ジャイアントパンダ)が世界に知られるようになったきっかけから始まります。生きたままのパンダが初めて中国国外に出たのが第二次大戦前の1938年、行先はアメリカだったとのこと。知りませんでした。そしてアメリカで「パンダブーム」が起きたのだそう。
それを受けて中国はパンダの「価値」に気づき、その「利用」を考えるようになる、それを「パンダ外交」と称するわけです。
日本でパンダといえば、トットちゃん、黒柳徹子さん抜きにには語れませんよね。
「彼女は一九七二年のパンダ・ブーム以前から各種メディアでこの動物を紹介し、パンダの知名度向上に貢献してきた」
黒柳さんは、小学校低学年のときカメラマンの叔父がアメリカからパンダのぬいぐるみをお土産に買って帰ったのがパンダとの最初の出会いだったと回想しているそうで、家永さんは、このぬいぐるみは、このアメリカでのパンダブームの最中に製造されたものと考えて間違いない、と推測しています。
「つまり、黒柳は戦前からのパンダ・ファンであるだけでなく、世界初のパンダ・ブームに巻き込まれた一人なのだ。パンダをめぐる歴史の生き証人といえよう」
ここまで書いていたら今日22日(水)の朝日新聞朝刊にびっくりする記事が載っていました。
同日から中国を訪問する公明党の山口那津男代表が、中国政府に対して新たなジャイアントパンダの貸与を要請するのだそうです。パンダを借りたいという声が各地から上がっていて、実現できるようにお願いしてくる、との談話も載っています。