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BLOG校長ブログ

2023.12.19

さよなら「トロリーバス」 ①

国内最後のトロリーバスが廃止されるというニュースが先日の朝刊各紙に掲載されていました。「トロリーバス」と聞いても、ピンとこない人が多数派でしょう。相変わらず「鉄ネタ、交通ネタ」とあきれられそうですが、交通政策という視点で考えさせられるところもあるかと。

日本経済新聞のウエブ版から引用します。

富山、長野両県をケーブルカーやバスで結ぶ「立山黒部アルペンルート」を運営する立山黒部貫光(富山市)は11日、国内で唯一のトロリーバスの運行事業を2024年12月1日で廃止する予定だと発表した。交換が必要な部品の調達が困難になったため。

トロリーバスは、架線からの電気で走る仕組みで、鉄道の一種「無軌条電車」に分類される。今後は架線を使わない電気バスを導入する。

立山黒部アルペンルートのバスは、立山トンネルの室堂―大観峰間の約3.7キロを約10分で結んでいる。現在8台が稼働し、1996年の運行開始から累計1920万人以上が利用している。

アルペンルートでは、関西電力のトンネルでもトロリーバスが走っていたが、2019年に電気バスに切り替わり、立山トンネルのバスが国内唯一となっていた。

アルペンルートは4〜11月に営業。電気バスへの転換は25年4月からとなる。

「立山黒部アルペンルート」は長野県と富山県の境に連なる標高3000mメートルクラスの山々を貫く観光ルート。自然保護の観点から車が入れず、その代わりにロープウエイやケーブルカーなどを乗り継ぐのがその特徴で、トロリーバスもその一つでした。

かつてはこのルートにトロリーバスが2路線あり、長野県側からルート途中の黒部ダムまでを結ぶ関西電力の路線(関電トンネルトロリーバス)は記事にあるようにすでに電気バスに転換。富山市側の立山トンネルを走るトロリーバス路線が残っていたわけです。

トロリーバスを一言でいってしまえば電車とバスを合わせたようなもの、でしょうか。外見はバスそのもの、ただ屋根からポール(棒状のもの)が伸びています。鉄道の架線と同じように道路の上に架線が張られていて、このポールを通して架線から電気をとり、バス車内のモーターが回って動くということです。

関電トンネルのトロリーバスの開業が1964年、前の東京オリンピックの年で立山トンネルの路線がトロリーバスになったのが1996年からで、その前はディーゼルエンジンのバスが走っていたようです。その立山トンネル路線は全線がトンネル内、関電トンネル路線もほとんどがトンネル内を走ります。立山トンネル内ではディーゼルエンジンバスの排気ガス対策で苦労したようです。そうなると別の仕組みで走るバス、ということになります。

電気で走るバスとなると電気自動車、いわゆるEVのバス版をイメージしますが、両路線の開業時はまだ一般的ではなく、例えば車載のバッテリー(蓄電器)など今の水準から到底実用的ではなかった、それで電気は外(架線)からとるトロリーバスという選択になったのでしょう。

そして関電トンネル路線が先に電気バスになり、立山トンネル路線に国内で唯一トロリーバスが走っていたのですが、部品の交換など支障が出てくるのはやむを得ないところ。運営会社の「お知らせ」によると「車両の更新期にあたり」、記事では「交換が必要な部品の調達が困難になったため」、電気バスに置き換えることになったというわけです。