2024.01.17
京料理と和食が同じようにとらえられるようになったきっかけとして、『京都 未完の産業都市のゆくえ』で筆者の有賀健さんは観光をキーワードとしてあげていました。観光客を呼び込む魅力の一つとして日本ならでは、京都ならではの食事が強調されるようになった、ということですね。
近年の観光を語る、考える際に必ずといっていいほど言及されるのがインバウンドとかオーバーツーリズムという言葉、現象でしょう。いつからかニュースで普通に使われるようになってきました。ただ、オーバーツーリズムを「観光公害」とか訳してしまうのが適切かどうか。
政府・観光庁の資料によると、オーバーツーリズムは2016年、米国の旅行業界向けのメディアで初めて生み出された言葉だということで、「観光白書」(平成30年版)では
「特定の観光地において、訪問客の著しい増加等が、市民生活や自然環境、景観等に対する負の影響を受忍できない程度にもたらしたり、旅行者にとっても満足度を大幅に低下させたりするような観光の状況は、最近では「オーバーツーリズム(overtourism)」と呼ばれるようになっている。」
とされています。
また、2023年10月に開催された「観光立国推進閣僚会議」に出された国土交通省の資料「観光の現状について」では、オーバーツーリズムと明示してはいないものの「地域で発生している課題の事例」として京都市もとりあげられています。
<混雑>
「主要観光地へ向かうバスが増便されているものの、これを上回る乗客によりバスターミナルや車内が混雑。また、大型手荷物の持ち込みにより、円滑な運行に支障」
<マナー違反>
「芸舞妓を無断で写真撮影したり、車道まで広がっての歩行、私有地への無断立ち入り等の事例も発生」
と例示されています。
(京都市以外では北海道美瑛町、鎌倉市があげられています)
『京都 未完の産業都市のゆくえ』ではこんなデータがしめされています。
「JR京都駅以北では、南北の交通で渋滞が常態化し、市中心部では旅行速度が時速20キロメートル未満となっている区間が多数存在し、市全体での平均速度は時速22・7キロメートルと政令指定都市の中で最も遅い」
なるほど、これではバスも思うように走れません。もちろん観光が渋滞の要因のすべてではなく、京都の市街地はそもそも道路が狭いうえにバス頼みという構造的な問題はあるのですが、オーバーツーリズムといっていいのでしょう。
2022年の観光客数は4361万人、前年の2102万人から大きく伸び、コロナ前2019年の5352万人に戻りつつあるとのこと。2022年度の日本人宿泊者数が911万4千人、外国人宿泊者数が57万6千人というのは正直どうなのでしょう、観光客数の割には少ないような。ちなみに修学旅行生数は74万3千人で外国人宿泊者数より多い!