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BLOG校長ブログ

2024.02.19

ポストモダンでキッチュ 東野高校建築論 ①

東北大学で都市・建築デザイン学を教えていらっしゃる五十嵐太郎教授が先日、本校見学に来校されました。自身のX(旧ツイッター)に感想を書かれているのですが、短いながら(字数制限がありますからね)、本校の特徴をコンパクトにまとめていただいているようなので、紹介します。

クリストファー・アレグザンダーの盈進学園東野高校を見学。群としての建築の配置構成が絶妙。地形とも絡み、身体で楽しめる空間。完成時はポストモダン・キッチュとみなされたが、40年が経ち、いつの建築かわからなくなったタイムレスな魅力を獲得。当時はめずらしい木造や参加型も、今は注目されるし

Translated from Japanese by
Tour of Christopher Alexander’s Higashino High School. The arrangement of the buildings as a group is exquisite. A space that is intertwined with the terrain and can be enjoyed with your body. When it was completed, it was considered post-modern kitsch, but 40 years later, it has acquired a timeless charm that makes it hard to tell when it was built. Wooden structures and participatory structures, which were rare at the time, are now attracting attention.

失礼ながら少し補足します。

クリストファー・アレグザンダーは本校を設計した建築家、オーストリア・ウィーンに生まれ英国・ケンブリッジ大学、米国ハーバード大学などで学び、カリフォルニア大学バークレー校教授などを務めました。「パターン・ランゲージ」を提唱したことで知られます。ではその「パターン・ランゲージ」って、ということになりますよね。

『パターン・ランゲージ 創造的な未来をつくるための言語』(井庭崇・編著、慶応義塾大学出版会、2013年)

「パターン・ランゲージ」研究の第一人者、慶応義塾大学教授、井庭崇先生の著書です。

「パターン・ランゲージは、一九七〇年代に建築家クリストファー・アレグザンダーによって、住民参加型の町づくりを支援するために提唱された方法である。彼は町や建物に繰り返し現れる特徴を「パターン」と捉え、それを「ランゲージ」(言語)として記述・共有することを提案した。目指したのは、古きよき町や建物がもっている調和のとれた美しい「質」を、これからつくる町や建物においても実現することであった。そこで、そのための共通言語をつくり、住民たちがデザイン(設計)のプロセスに参加できるようにしようとしたのである」

さらに詳細な説明が続くのですが、ここでは「住民参加型」という点を強調しておきます。本校開校時、どのようなキャンパスにするのかについてアレグザンダーと教職員が意見交換を重ねました。住民=教職員が学校作りに(デザインのプロセスに)参加した格好です。五十嵐教授が書いた「参加型」はこのことを指しているのでしょう。

Xの引用に戻ります。順不同で「完成時はポストモダン・キッチュとみなされた」についてです。

まず「ポストモダン」ですが、「ポスト=後」なのでモダンの後ということです、ではモダンとはということになりますが、建築の歴史で言われるのが「モダニズム建築」、モダニズムの言葉の意味そのものは「近代主義」ということになるのですが、ではどういう建築なのか。

いくつかの辞書から説明が詳しかった『表現読解 国語辞典』(ベネッセ、2018年初版第16刷)で「モダニズム」についてこうありました。

「既成の概念や伝統的権威を否定し、新しい価値や感覚を求める思想上・芸術上の風潮」
「工芸・建築の分野では、機能主義的な立場から芸術と技術の統合をめざしたドイツの造形学校バウハウス」

なかなか一言では難しそうですね。先に紹介した『日本の建築』(隈研吾、岩波新書、2023年)に頼りましょう。

「モダニズム建築は新時代に出現した高層建築をも処理するユニヴァーサルなシステムをめざした」
「モダニズム建築は、工業化社会が必要とする二つの建築、すなわち都市の高層建築と郊外の中産階級の住宅に対応する新様式建築として二〇世紀を席捲した」

その後に続く建築様式が「ポストモダン」ということになるわけです。