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BLOG校長ブログ

2024.03.29

新選組から西南戦争へ ④

今回のテーマで最初に紹介したように『一刀斎夢録 上・下』(文春文庫)の主人公、斎藤一から新選組時代、戊辰戦争、西南戦争などの昔話を聞く相手は現役の軍人です。そしてその時期を明治の終わり、つまり明治天皇が死んだ直後に設定しています。明治天皇の死を後追いするように乃木希典が自殺します。「殉死」という言い方をされています(もちろん近代になって殉死は禁止されるのですがこう表現されることが多いかと)

乃木は西南戦争で軍のシンボルともいえる軍旗を奪われたことを生涯の恥としていました。この乃木の死について現役の軍人に語らせ、斎藤も語ります。これがサイドストーリーともなって小説に一層の深みを持たせています。

新選組と聞くと、司馬遼太郎の作品『燃えよ剣』の主人公、土方歳三や病弱ながら天才的な剣の使い手とされる沖田総司らがよく知られており、人気があるようです。動乱の幕末という時代だからしょうがないといってしまえばそれまでですが、新選組は剣を振り回し、人を殺傷することを厭わない集団です。斎藤一の思い出話でも「そこまでやるか」という血なまぐさいところがあり、読む人によってはちょっとひいてしまうところはあるかもしれません。

同じく新選組をとりあげた司馬の小説『新選組血風録』も読んでみました。先にあげた『燃えよ剣』もだいぶ前に読んではいるのですが、なにぶんかなりの長編なので、手が出ませんでした。ということで『新選組血風録』ですが、購入したものの、実家の書棚にきっちりとありました。1962年(昭和37)小説中央公論で連載、文庫本は1969年初版、手にしたのは改装版で2024年1月、44刷、超ロングセラーですね。

新選組のメンバーを一人あるいは数人ずつをとりあげて構成されている短編集のような形です。残念ながら斎藤一は主役としては登場しません。数か所、名前が出てくるだけでした。
浅田次郎さんの新選組を描いた作品としては『壬生義士伝』(上下巻、文春文庫)があり、すぐに購入したのですが、まだ読んでいません。

明治天皇の死、乃木希典の殉死に触発された文学作品として夏目漱石の『こころ』森鴎外の『興津弥五右衛門の遺書』がよく知られています。明治を代表する文豪二人に書かせるほど社会に強い衝撃を与えたということでしょう。乃木希典について軍指揮官としての能力についてはいろいろな見方があるようです。日露戦争を描いた司馬遼太郎が『坂の上の雲』でとりあげています。