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BLOG校長ブログ

2024.04.10

「ご当地ソング」考 ③

京都の歌を集めたCDがあることを知った時に思い出したことがあります。30年ほど前、京都で新聞記者をしていた時に京都市役所の若い職員たちが京都の将来を考える研究会を作っていて、「最近、京都をうたう歌がへっているのではないか、それって、観光地としての京都の魅力がなくなっているからではないか」という問題意識を持ち、都市研究の雑誌に論考を発表したことがありました。

なかなか面白いなと思って少し取材してみたのですが、何年に京都に関するこういう曲が発表されている、それを経年で追いかけるというのはこれはデータ的にとても困難で、「減っているのでは」という印象論では記事にならない、よって取材は途中で終わってしまった苦い経験があるからです。

もちろん、今回のCDだって、言い方は悪いですが制作会社の担当者の「好み」での選曲でしょうし、商品説明にある「中でも京都の歌は、テレビやラジオや有線放送から大量に流れていました」も、まさに印象論。とはいいつつ、当時の市役所の若い彼らの心配をよそに、京都は相変わらず観光地としての人気を誇っていて、市役所のみなさんは「オーバーツーリズム」対策にこそ知恵を絞らなくてはならない状況。相変わらず「恋につかれた人」ばかりが訪れているとは、さすがに思いませんが。

これまた印象論なのですが、それでも、歌謡曲やポップス、フォークソングなど、具体的な地名を入れて歌われるということで考えると、京都は十分多い方ではないでしょうか。もちろん、ダントツは東京でしょう。ほかにどうでしょうか、神戸、横浜、長崎などは多いほうかも。なんか港町が多いような。そうそう『港町ブルース』など、北から南まで列島の著名な港を網羅しています。

それでも『襟裳岬』(吉田拓郎、森進一)はよく知られているだろうし(行くとなるとやはり遠いので、なかなかではありますが)、青森県の竜飛岬に行けば石川さゆりさんの歌声(『津軽海峡・冬景色』)がどことからもなく聞こえてくるし(本当か?)、長崎に行って晴れているとがっかりする(『長崎は今日も雨だった』、晴れの方が観光にはいいのですが)、いやはや、「ご当地ソング」はやはり貴重な観光資源でもあり、旅の印象を大きく左右するものではありましょう。

私自身が知らないだけかもしれませんが、近年のJポップの曲でどうでしょう、地名が具体的に出てくる曲ってありますか、ぜひご教示ください。

ついでになってしまいますが

小柳ルミ子さんのところでふれた大ヒット曲『私の城下町』、国内に城下町はたくさんある、どこが舞台かって気になりませんか。とんでもない本があります。

『歌謡Gメン あのヒット曲の舞台はここだ』(テリー伊藤、宝島社、2005年)

「とんでもない」と書きましたが、いわゆる「とんでも本」(フェイクいっぱいの本)ではなく、著者というか編者に注目。

テレビディレクターとして数多くの人気テレビ番組をつくり、自らもテレビに数多く出演しているテリー伊藤さん。その伊藤さんがパーソナリティーを務めたラジオ・ニッポン放送の番組「テリー伊藤 のってけラジオ」のなかで、歌謡曲などの歌の舞台はどこなのかを作者や歌手に直撃取材してその答えを紹介する人気企画があり、その内容をまとめた本だそうです。その調査、取材にあたる番組スタッフを「歌謡G メン」と名付けたわけです。

『わたしの城下町』は歌詞に場所がわかりそうな表現はありません。小柳さん自身の回答、「歌う時にイメージしていた城下町は、故郷福岡にあるお城とその一帯の街並み」と紹介されています。うーん、福岡県内、お城いくつかあるんですけと、と突っ込みたいところですが、「ちなみに、レコードジャケットを撮影した場所は小田原城」、うん、取材が深い。

『瀬戸の花嫁』、花嫁はどこの島へ嫁いだの、との質問にこれも小柳さん、ご本人のイメージでは「この歌を歌っていた当時、取材に訪れた瀬戸内海の女木島」だそう。ただ、「地元では通称鬼ヶ島とよばれている島」だそうで、これは言わなかったのが正解。

しかし、ラジオ番組の企画として面白いし、まじめに答えてくれる人たちも偉いですよね。作詞・作曲者本人では松本隆さん、さだまさしさん、喜多條忠さん(『神田川』作詞など)、そしてなんと秋元康さんまで。

「京都の歌がないか?」とこの本を書棚から探し出したのですが、結論は「かすっている」といったところでしょうか。

はしだのりひこさんの『花嫁』、花嫁は夜汽車に乗ってどこへ行ったの、との質問にはしださん本人が回答、すばり「京都」、うん、はしださん京都の方だし、すぐに納得。

1970年代の人気アイドルの一人、麻丘めぐみさん知ってますか。ヒット曲として『わたしの彼は左きき』があげられますが、ここではデビュー曲『芽生え』が取り上げられています。「あの日あなたに会ったのは」と歌詞にある、どの街で会った? 回答は麻丘さん本人、「歌う時イメージしていた歌の舞台は京都」と、これは意外。ただその根拠というか理由が「当時、作詞の千家和也先生が京都を拠点にお仕事していらっしゃったので」とあり、共感できるかはちょっと微妙。

もう1曲、尾崎亜美さんの『マイピュアレディ』、本にはこうあるけど、ご本人のオフィシャルサイトでは『マイ・ピュア・レディ』。尾崎亜美さん、知らないかな、杏里さんのヒット曲『オリビアを聴きながら』の作者です。この『マイ・ピュア・レディ』は化粧品会社のコマーシャルで使われ結構ヒットしたんですが。

「ショーウィンドウにうつった街」と歌詞にでてくる、その街は、尾崎さん本人の回答、「京都、尾崎亜美が19歳でこの詞を書いたときに住んでいた故郷。河原町、四条河原町あたりのイメージ」となっています。京都の方とは知らなかった、ポスト・ユーミン(荒井由実に続く歌い手)とも言われていたので勝手に東京の人と思っていました。ちなみに、この本では「川原町、四条川原町」と表記されていましたが、まあ、間違いですね。