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BLOG校長ブログ

2024.04.22

鉄道の歌と旅キャンペーン ②

谷村新司さんが作り、山口百恵さんが歌って大ヒットした『いい日旅立ち』はキャンペーンソングが旅行そのもののキャンペーンへと広がっていった好例でしょう。国鉄の「DISCOVER JAPAN ディスカバー・ジャパン」もこの言葉、コピーの力ゆえに旅行ブームを生み出し、観光地がにぎわったのはまちがいないところ。そのようなコピーとしてよく知られたものが他にも思い浮かびます。

「そうだ京都、行こう。」もその一つでしょう。また「京都」ですが、今回は「鉄道ネタ」と言い訳しておきます。JR東海が1993年から実施しているキャンペーンの名称、コピーです。

1978年、山口百恵さんが歌う『いい日旅立ち』をキャンペーンソングとした「いい日旅立ち DISCOVER JAPAN 2」が始まり、1980年には国鉄全線完乗を目指す「いい旅チャレンジ20,000km」もスタート。1987年、国鉄がJR各社に変わり国鉄時代のキャンペーンを成功体験として引き継いだのでしょうか、あるいは反面教師としたのか、JR東海が打ち出したのが「そうだ 京都、行こう。」でした。

蛇足ではありますがJR東海が何で「京都」なのということです、言うまでもなく京都は地理的には「西日本」「関西」「近畿」といったくくりですから。

そうです、JR東海のドル箱、稼ぎ頭の東海道新幹線に乗ってもらおうというのがキャンペーンのねらいです。JR各社の営業範囲でいえば「東海」はおおよそ静岡、愛知、岐阜、三重各県になりますが、新幹線については東海道新幹線の東京・新大阪駅間がJR東海です。京都府・京都市はJR西日本の営業範囲ですが、新幹線は別というわけです(「鉄ちゃん」的に言えば京都駅はJR西日本部分と東海部分とに分かれています)

東京や名古屋・中京圏のお客さんに東海道新幹線に乗って「京都、行こう」、京都観光に行きましょうと呼び掛けたわけです。テレビコマーシャルや駅のポスターを見たことがある人も多いでしょう。このキャンペーンでこれまで使われたポスターから写真とコピーの抜粋が一冊の本になっています。

『「そうだ京都、行こう。」の20年』(ウエッジ編、2014年第1刷発行、手元は22年第10刷)

いやあ、ぱらぱらとページをめくっているだけでいい気分です(足を運んでもらわないとJR東海は困るんでしょうが)。写真もコピーも安易に引用できないのが残念ですが、「そうだ京都、行こう。」公式ページのキャンペーンギャラリーで主だった写真をみることができます。

その姉妹編ともいえるのが

『「うましうるわし奈良」の10年』(ウエッジ編、2015年第1刷発行、手元は22年第5刷)

「うましうるわし奈良」は、やはりJR東海が2006年から展開した奈良への観光キャンペーンです。こちらはいったん終わっているようです。現在は「いざいざ奈良」というキャンペーンのようですが、公式ホームページのキャンペーンギャラリーに「過去のキャンペーン」としてポスターが紹介されています。

東海道新幹線を利用して奈良観光ということでしょうが、奈良に行くには関東からの鉄道利用だと京都で乗り換えるのが多数派でしょう(名古屋・中京圏からだと近鉄線という選択肢もあります)。京都乗り換えだとJR西日本奈良線あるいは近鉄京都線に乗ることになります、こちらの2社にとってはありがたいキャンペーンですね。

さて、この京都と奈良のキャンペーン、ポスターの図柄(写真)の特徴をざっくりとまとめると、京都は寺全体や街ののたたずまいが四季折々にとらえられています。庭園も多いですね。そして奈良、これはもう仏像!

先に書いたようにどちらのキャンペーンについても私自身、新幹線の駅などであたり前にポスターをみていました。奈良については、ポスターにもなっているある国宝の観音像をとらえた写真入りのクリアファイルを記念品としてもらったこともあったのですが、あまり気にもとめていませんでした。単発だとなかなかですかね。

ところが昨年、京都郊外のあるお寺、そこも取り上げられていたからか、休憩室にこの本が置いてあったのです。「そっか、本になっているんだ」と知り、すぐさま京都、奈良それぞれで2冊手に入れたのでした。

そしてその勢いでもう1冊

『「青春18きっぷ」ポスター紀行』(込山富秀、講談社、2015年第1刷発行、手元は22年第11刷)

「青春18きっぷ」は期間限定ながらJR各線の各駅停車などに運賃のみで乗ることのできる特別切符。国鉄時代からあり、JRにも引き継がれています。もともとは若い人に鉄道を利用してもらおうというねらいがあったようですが、別に18歳でなければいけないという決まりはありません。広い意味では観光キャンペーンの一種と言えるかもしれません。

この本では、1990年からこのポスター制作を担当したアートディレクターの方が写真の舞台となった路線ごとにポスターを紹介し、撮影秘話などを添えています。やはりローカル線や無人駅なども多く、乗客としての「人」が写りこんでいるポスターもあります。

正直、ポスターを駅などで実際に目にした記憶は少ないのですが、今や「撮り鉄」の聖地ともなっている場所(いい構図で列車の写真が撮れる場所ですね)、あるいは駅や橋などが登場しています。このキャンペーンポスターが「撮り鉄」を育てたのかもしれない、などと勝手に想像しました。

そう思うのも、初期の作品の撮影は橋口譲二さん、そして「撮り鉄」でこの人を知らなければモグリと断言します、真島満秀さんが参加しているからです。その写真が「撮り鉄」を張り切らせたに決まっています。

そしてなんと、アラーキーこと荒木経惟さん撮影作品もけっこうあるのです。これにはたまげました、アラーキーを起用したとは。「やるなJR、見直した」。

ちなみに2024年2月には続編ともいえる『「そうだ 京都、行こう。」の30年』が発刊されています。

「そうだ京都、行こう。」のキャンペーンはこちらから

「いざいざ奈良」のキャンペーンはこちらから
「過去のキャンペーン」として「うましうるわし奈良」のいくつかのポスターが紹介されています