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BLOG校長ブログ

2024.04.23

ラジオを応援します ①

朝の通勤時間、車の中ではもっぱらラジオ(主にNHKのAM・FM放送)を聴いています。ある番組の中で、全国各地の市民レポーターが地域の新しい施設や珍しい祭りの様子、旬の食材などを伝えるコーナーがあるのですが、言葉だけで伝えるのはそれは難しい。ところがネット(SNS)にその番組の公式サイトがあって、レポーターがその話題にかかわる写真をアップし、東京のスタジオのアナウンサーがそれをみながらレポーターとやりとりしています。ラジオの視聴者もその写真をみることができるので、とりあげているテーマへの理解が深まる仕組みです。

ただ、私のように車を運転しながらとか食事の準備をしながらなどの、いわゆる「ながら視聴」がラジオの視聴形態としては多数派でしょうし、視聴者のみながこのようにSNSでの写真を見られるわけではないでしょうし、最近のラジオでは珍しくないのかもしれませんが、「この手があったか」と感心しました。その一方で「そういえば見えるラジオというのがあった」と思い出したのです。

このようにラジオ番組がSNSの画像を活用することを「見えるラジオ」と表現したわけではなく、もちろんラジオの受信機そのものが「見える」とかの笑い話ではなく、かつて「見えるラジオ」と称するサービスが本当にあったのです。

音と映像で耳と目に働きかけるテレビ放送に比べて、ラジオは音で完結させなければならないメディアです。ラジオで話す人、アナウンサーであったりパーソナリティーなどと呼ばれる人の話術というか話しぶりは、テレビとは異なるものが求められます。ラジオで番組を制作する人たちには多くの制約があります。

そのような中でメディアとしてのラジオのあり方を業界の人は常に考えてきたわけですし、記者時代に接したラジオ局の現場の人たちはみな誇りを持って仕事をしていることに感心もしていました。それだけにラジオに接する人を増やしたいというのは当然の願望でしょうし、そこから「見えるラジオ」という発想が出てきたのでしょう。

「見えるラジオ」についての技術的な説明は難しく、ざっくりと説明をしますが、ラジオのFM放送の電波のすき間を使って、ラジオ本来の音声だけでない文字情報なども送信しようというものです。動画などを送ることはできませんでしたが、ニュースや天気予報、交通情報などの文字情報を送り、「見る」ことができたのです。

改めて調べてみると1994年、エフエム東京が「見えるラジオ」という名称で本放送を開始し、その後別の放送局も同様のサービスを展開したようですが、あまり普及しませんでした。その理由は単純明快でしょう。受信用の専用端末(専用ラジオ)が必要だったからです。

お金を払って専用端末を購入しなくてはならない。最初に書いたように、私に限らずラジオ視聴者の多くは「ながら視聴」ではないか、耳で情報を得る、音楽を聴くだけで十分、ラジオにそれ以上のものを求めるのかということだったのでしょう。

新聞社で仕事をしていた時、インターネット時代に新聞や放送などの既存メディアがどう向き合っていくのか、新聞社の垣根を超えて担当者が集まり、霞ヶ関の役人や放送局の人たち、もちろんネット業界の人たちと勉強会を重ねていました。そんな中で、ラジオ関係の人たちから時々聞かされていたのがこの「見えるラジオ」でした。

インターネットが急速に普及し、今ではネットでラジオを聴くサービスもあります。リアルタイムでラジオを聴くだけでなく、「聴き逃し配信」という形で生放送が終わった後に、改めて放送を聴きなおすことすら可能です。「見えるラジオ」のころには、インターネットのここまでの早い普及はあまり想定しにくかったのかもしれませんし、それを待っていられないという、ラジオの将来への危機感もあったのでしょう。きつい言い方をしてしまえば、メディア環境が大きくかわっていく「過渡期」の試みの一つだったということでしょう。

いずれにしても、今回あげたラジオでのSNS活用は、インターネットの普及にうまく乗ったアイデアです。言い方は悪いですが「ただ乗り」です。期せずして「見えるラジオ」が実現できてしまったわけです。もちろんSNS活用のためにパソコンやスマホなどの道具はいるわけですが、ラジオのためにわざわざそれを買う人はいない、かつての「見えるラジオ」のために専用端末を購入するのとは次元の異なる話しです。

ラジオの業界の方でも「見えるラジオ」のことを知っている人の方が少ないでしょう。あのころの業界の方に現状についての感想を聞いてみたいような気もします。もしかしたら、インターネットを生かしたラジオの将来像を描いている人たちがいるのかもしれません。それはそれで実に楽しみな話です。

そういえば・・・

ラジオとネットの関係でいえばいつのころからでしょう、各番組の公式サイトがつくられて、出演者情報などがアップされています。私自身、運転しながら放送で流れる曲を聴いていて「あっ、この曲いいな」と思っても曲名や歌手名を聴き逃していることがあります。多くの人が経験していることでしょう。放送終了後に公式サイトとかで確認すると、番組で放送した曲の一覧とかが掲載されていて、これは助かります、重宝しています。これも「見えるラジオ」かしら。