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BLOG校長ブログ

2024.04.26

ラジオを応援します ②

さて「ラジオを応援する」といっても、そもそもラジオ放送は現在、メディアとしてどのようなポジションを占めているのかということを考えなくてはなりません。メディアとしての価値はお金だけで評価するのはいかがかとは思います。例えば災害時におけるラジオの役割が近年、大きく見直されています。ただ、NHKを除けばラジオ局も民間企業なので、営業として成り立たなくては続きません。企業としての収支を見ないわけにはいきません。そして収入の多くが広告、放送でのCMに頼っています。

同じ放送局でもラジオ放送はテレビ放送との決定的な違いがあります。ラジオ放送には「どのように聴かれているか」を客観的に測る物差しがないことです。

テレビ放送には、いろいろと批判されながら、あるいはネットで視る時代にどうなのかといわれながら「視聴率」という数字があります。個々の番組の人気がくっきりと出てしまうので、俳優や芸人にはおそろしい数字なわけですが、テレビ局の経営にとっても極めて重大な指標です。視聴率が悪い=視ている人が少ない番組にはスポンサーはつかないでしょう、つまり売り上げに結びつかないわけです。

ラジオにも「聴取率」という言葉はあることはあるのですが、これはもう容易に数字として出しようがないことはすぐわかります。テレビの視聴率のようにモニター(サンプリング)を抽出して測ることはほぼ不可能です。誰がどのように聴いているのかがわからないので、ラジオに広告を出してもらうことをスポンサーに理解してもらうのはこれは難しい。また、映像がないので、「言葉」だけで広告メッセージを伝えなければならないというハンデもあります。

国内の広告の現況について一番に参照されるのが、広告代理店・電通が毎年発表している「日本の広告費」というデータです。最新の2023年版が2月27日に発表されています。ちょっと驚きました。

ここでは媒体(メディア)別に1年間で使われた広告費がまとめられています。

「マスコミ四媒体」というくくりに新聞、雑誌、テレビ、ラジオが入っており、また「インターネット広告費」があり、「プロモーションメディア広告費」というのもあります。これは屋外看板や交通、織り込み、ダイレクトメールなどです。

まず総論を少し。2023年の総広告費は過去最高の7兆3167億円で前年比103%。コロナ禍での落ち込みを回復したようです。その内訳ですが、インターネット広告費が3兆3300億円で前年比107.8%、電通のリリースには「ネット広告費は広告市場全体の成長を後押しした」と書かれています。構成比は総広告費の約45%でこちらも年々高くなっています。

マスコミ4媒体は2兆3161億円で前年を下回りました。構成比は約32%です。

ネット広告費はマスコミ4媒体のうちの新聞広告を2008-09年ごろに追い抜き、新聞業界は衝撃を受けました。2019年にはテレビ広告費も追い抜き、2021年にはマスコミ4媒体計も追い抜いたとのこと。最新のデータをみると、この差は今後さらに広がっていくでしょう。

ところがです。ここ数年ラジオ広告が健闘しているのです。構成比でこそ全体の2%にも満たないのですが、2023年のラジオ広告費が1139億円、2年連続で前年を上回っています。テレビが前年を下回っているのにです。電通のリリースではラジオ広告について以下のように分析しています。
「業種別では、コロナ禍からの回復や外出・行楽需要の高まりにより、「ファッション・アクセサリー」(前年比136.7%)や「外食・各種サービス」(同110.7%)が二桁成長となった」

これだけではなかなかわかりにくいですが。

いずれにしてもマスコミ4媒体はこのネット広告全盛の時代にどう対応していくのか。例えばテレビ局、特に東京のキー局は業界でいうところの「放送外収入」を増やすことに力を入れています。まず「放送収入」は広告収入と考えていいでしょう。スポンサーがついて番組が作られ、放送されます。その「外」の収入とは何かということです。

テレビ局は最強のコンテンツ(番組)制作者であり、権利所有者です。かつてはDVD販売などでそのコンテンツで何度も稼いだわけです。また人気番組のキャラクター商品販売ではその権利料も入ってきます。東京のキー局の最近の決算をみたら、収入の2割くらいが「コンテンツ・ビジネス」などと分類される放送外収入となっているようです。

このようなコンテンツ・ビジネスですが、例えばDVDにとって代わりつつある動画配信などを考えてもインターネットの普及はテレビ局にとってありがたいものでもあるわけです。ネットに広告費を持っていかれると敵視するほど簡単な話ではないこともわかります。

電通の「2023 日本の広告費」の調査リポート(ニュースリリース)はこちらを