2024.04.30
「ラジオ(radio)」はラジオ放送だけでなく無線、無線通信という意味もある、電話とは違った利点がありまだまだ活用されている、その無線を楽しむとはどういうことか、自分たちも無線を使ってコミュニケーションを図る、そういう人もいるでしょうが月刊誌『ラジオライフ』(三才ブックスる)の主たる読者はそうではなく、いろいろな無線通信を聞いて楽しむ、ということでした。「えっ、他人の無線を聞いていいの?」という当然の疑問がわきますよね。
無線は受信機(端末)の周波数さえあっていれば誰でも聞くことができます。電話との最大の違いです。ラジオ放送が受信機さえあれば誰でも聴けるのと仕組みは同じです。だから単語の「ラジオ(radio)」は共通なわけです。ただし、あくまでも聞くだけです、聞こえてしまったという理屈です。
この「聞こえてしまった」を「傍受」という言い方をします。「傍受」は辞書的には「無線通信を交信相手でない者が故意または偶然に受信すること」と説明されますが、周波数がわからないと聞けないため「偶然」がどれだけあるのかなとは思います。それにしても「傍受って何が楽しいのか」って、そこは趣味の世界ですから。
そこで、これが前回書いた「ラジオライフは最近は何を書いているのだろうか」につながります。実はかつてはいろいろな業務用無線を聞くことができました。傍受可能だったのです。ホームページの『ラジオライフ』紹介に書かれていた警察無線あるいは消防無線なども聞けたのです。傍受できたのです。
ところが警察無線についてはそれを聞いて「悪用」する人が出てきてもおかしくないわけです。1984~85年に起きた警察庁広域重要指定114号事件、いわゆる「グリコ・森永事件」、食品会社を狙った企業脅迫事件でしたが、取り逃がした犯人が乗っていた車の遺留品の中に無線受信機があり、警察無線の周波数に合わせてあったのです。「傍受」の説明にあった「故意」に受信していたわけです。
当時、少しずつ警察無線のデジタル化が図られていました。暗号化しようというわけです。当然「傍受」できません。ただ技術的な側面、費用面でなかなか進みませんでした。ところがこの事件以降いっきに進みました。犯人を取り逃がした批判をかわすために無線傍受を言い訳にしたとまではいいませんが、114号事件は皮肉にも警察装備近代化のきっかけになったわけです。
この事件のころまでは警察無線もそれなりに傍受できたのです。そうです、新聞社も放送局も警察、事件取材に警察無線を傍受することは欠かせないものでした。『ラジオライフ』が創刊されてしばらくは警察無線を傍受できたのです。新聞記者相手だけでは雑誌として商売になりませんから、傍受することを楽しみにしているそれなりの数の人がいたということです。
なので『ラジオライフ』にはお世話になりました。何しろ、全国の警察無線の周波数一覧とかが掲載されていたんですから。また、広告で性能のいい無線受信機をチェックしたり、そういう受信機を販売している近場の店を調べたりしていました。インターネットはありませんから『ラジオライフ』のような「専門誌」が頼りでした。
そして最近の『ラジオライフ』です。もうかつての面影はありません。ネットやゲーム関係の記事が目につきます。無線傍受という範疇では、ある特定の場所でどういう業務無線が聞けたか、といった読者投稿などが目立つくらい、今年1月号の特集が「タクシー無線受信ガイド」で「全国タクシー無線周波数リスト」が掲載されていました。本校近隣のタクシー会社さんの名前もありましたが。うーん、ちょっとね、という感じ。
聞くだけならと書きましたが、無線を使うには(つまり無線で会話するには)原則免許が必要です(トランシーバーのような出力の弱いものはいりません)。新聞社もかつては日常的に無線機を使っていました。会社の車にも積んでありました。取材用のヘリコプターとの間のやり取りなどで無線を使うことも何度かありました。最近はどうなのでしょうか。
というわけで私も新聞社入社の際の研修で講習を受けて免許を取得しました。「級」が何段階かあって一番簡単な級です、もちろん。有効期限はないので今でも有資格者? もしかしたら制度そのものが変わってしまったかもしれませんが。いずれにしても免許状そのものはもはやどこにあるのか不明です。
『ラジオライフ』(三才ブックス)の公式サイトはこちら