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BLOG校長ブログ

2024.05.01

「水のノーベル賞」ーー沖大幹さん受賞 ①

少し旧聞になってしまいますが沖大幹(おき・だいかん)東京大学教授が「水のノーベル賞」とも呼ばれる「ストックホルム水大賞」の受賞者に選ばれました(新聞記事掲載は3月23日付)。日本からの受賞は23年ぶりだそうです。

20年以上前に取材して大変興味深くお話をうかがったことが思い出されました。いよいよ研究を深められていることを知り、感慨深いものがあったのですが、つい先日4月29日付で2024年春の褒章受章者が発表され、沖さんが学問や芸術分野で功績を残した人に贈られる紫綬褒章を受章されるとのこと。改めて著書を読んでみました。

『知っておきたい水問題』(沖大幹・姜益敏編著、九州大学出版会、2017年)
『水の未来--グローバルリスクと日本』(沖大幹、岩波新書、2016年)

『水問題』は沖さんをはじめ研究者が課題ごとに執筆していますが、「はじめに」で沖さんは

「地球規模の環境問題として、主に気候変動対策、食糧確保、安全な水資源の確保が挙げられ、人類にとってどれも解決しないといけない最重要課題です」

と位置付けます。そのうえで、水にかかわる問題は大きく二つにわけられる、と整理してくれています。

まず、水資源そのものの不足、つまり、そもそも多くの人が常に水を得られない状況に置かれている、2025年には世界総人口の約45%以上の人が水不足を感じる水資源の不足状態になると国連が警告しているそうです。もう一つが、安全な水の確保です。

そして、水のことは問題を抱えている地域や国に限定された問題のように考えてしまいがちだが、水資源と農業、畜産物との関係、食糧確保との関係などを考えると国際社会に共通した問題である、と沖さんは注意を促すのです。

このように幅広い視野を求められる水問題に取り組んできた沖さんですが、私が取材したきっかけは「仮想水」についてだったと記憶しています。こちらは『水の来未』から引用します。

「水をめぐる紛争は、深刻な水不足から想定されるほどには勃発していない。それはなぜだろうか」
「キングス・カレッジ・ロンドンのトニー・アラン教授は、それは食料輸入によってその生産に必要な水資源を使わずに済んでいるからである、と看破した」

「必要な水の大半は食料生産用であり、それは自分の地域の水資源を用いずとも、水が利用可能な地域で生産された食料を輸入することによってまかなえる。すなわち、水需給が逼迫している地域にとって食料の輸入とは、あたかも水を輸入しているようなものである」
「このような意味で、アラン教授はこれをバーチャル・ウォーター・トレード(仮想水貿易)と呼んだ」