2024.06.19
英連邦軍の日本占領について書いてきましたが、そもそも英連邦とは何かということ、これがなかなか難しい。「イギリスと旧イギリスの植民地だった国々で構成される、ゆるやかな連合組織」などと説明されますが、その国々の主権をどう考えるのか。例えば、外務省のホームページによると、オーストラリアの国家元首はイギリスのチャールズ国王で連邦総督が王権を代行と説明されています。カナダも同様です。
2023年5月、イギリスのエリザベス女王が亡くなりチャールズ皇太子があとを継いで国王に就任しましたが、このオーストラリアやカナダのように英連邦構成国での元首の交代にもなるので、英連邦という言葉が報道でとりあげられていたことは記憶に新しいところです。
英国そのものの正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)で、ここで「連合(United)」と使われており、それと英連邦の「連邦」はどう異なるのか。また世界の国の中には「連邦共和国」という名前の国もあり(例えばドイツ連邦共和国=Federal Republic of Germany)これらとどう違うのかということもあります。
タイトルにそのものずばり「英連邦」とあります。
「英連邦とは、イギリスと、過去にその帝国支配下に置かれた国々が中心となり、イギリスの君主を「首長」(Head)として共有しつつ、国家間の自由な連合体としてまとまったものである」
このように定義しながら
「それは随分と曖昧で捉えどころがなく、不思議な印象を抱かせる組織である」
「英連邦とはそもそも、現代世界に生きる私たちが自明と考えるような、主権国家が並び立つ近代国際体系から逸脱した存在である」
だから理解も難しいというわけです。かつて植民地を持っていた国と植民地から独立した国との間は対立しがちです。
「イギリスはなぜ、過去の帝国支配から脱して独立した国々と、英連邦という枠組みを通して共存を可能にできたのだろうか」
という問いを投げかけます。その答えを探っていくのがこの本の目指すところであり、地域間緊張が増している国際関係の中でこのようなユニークな国家間の連携がなぜなくらないのか、構成する国々にとってのメリットはなんなのかなどを考えていく著作です。
英連邦は1931年に正式に発足し、自治領であった地域が独立したりして構成する国々の形(政治体制)は変わりながらも今日まで続いています。公式ホームページによると現在の加盟国は56か国。発足時は「British Commonwealth of Nations」と、英国を表すBritishがついてましたが、脱英国の流れの中で現在はCommonwealth of Nationsが正式名、さらに略してCommonwealthという呼び方でもいいと申し合わせているとのこと。