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  • 2023.07.25

    本校通学圏内から生まれた名曲 その1

    今年の2学年の修学旅行はカナダ、北海道、沖縄の希望別3方面。事前準備としてたくさんの資料にあたって欲しいと思いますが、多くの人がまず手にとるのが旅行ガイドブックでしょう。たくさん発行されているガイドブックの中でよく知られたものの一つに「地球の歩き方」シリーズがありますよね。

    『地球の歩き方 埼玉』(2023~24)

    1979年の創刊以来、世界各地を紹介するガイドブックで100タイトル以上販売されているそうです。修学旅行先である「カナダ西部」はもちろん国内目的地の「北海道」「沖縄」もあります。そのシリーズで「埼玉」が先ごろ発刊され、書店で平積みされていたのでつい衝動買いしてしまいました。「埼玉」は初めてのことのようです。(「日本」というのも出ていてこれも話題になりました)

    本校所在の入間市に関しては、本校に隣接する「入間市博物館ALIT」や「旧黒須銀行」「ジョンソンタウン」などが紹介されています。

    驚いたのは「1973年の狭山市アメリカ村」というコラム。ミュージシャンの細野晴臣さんが1973年に発売したソロアルバム「HOSONO HOUSE」が狭山市の自宅でレコーディングされた、というエピソードでした。

    狭山市から入間市にかけて駐留米軍のジョンソン基地があり、入間市の「ジョンソンタウン」もそこからきているのですが、基地周辺の米兵向け、家族向けの住宅が駐留の撤退につれて空き家になっていき、そこに移り住む若者が増えていった。稲荷山公園周辺は「狭山アメリカ村」と呼ばれるようになり、細野さんも移り住み、その自宅で録音をしたのだそうです。

    後に発売されたCD版の解説には以下のように書かれています。

    「国道と緑深い丘の間にゆったりとした間隔で整然と並ぶ木造平屋建て壁には白いペンキが塗られ、その一角の光景は日本というよりアメリカの郊外のようだった。(中略)間取りは20畳ほどのリビング・ルームに6畳~12畳のベッド・ルームが2~3室、そしてキッチン、バス、トイレというのが標準だったように思う」

    「レコーディングにあたっては、リビング・ルームに16トラックのミキシング・コンソールが置かれ、演奏には8畳ほどのベッド・ルームが使われた。平均的な日本の家屋より広いとはいえ、機材や楽器やコードの束で、家の中は足の踏み場もないような状態だった」

    細野さんは、欧米の音楽、つまり主に英語の歌詞の音楽だったロックミュージックを日本にどう取り入れるか、日本語でロックになるのかと試行錯誤されていた時代に一つの答えを出した伝説的なバンド「はっぴいえんど」のメンバーで、その後、先ごろ相次いで亡くなった高橋幸宏さん、坂本龍一さんとYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)を結成し、世界に知られるようになります。

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    細野さんの自宅で録音された「HOSONO HOUSE」(CD)
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    「はっぴいえんど」解散後に発売されたいわゆる企画・編集版のCD
  • 2023.07.22

    学級通信 彩々--1学期を終えて

    20日に1学期終業式があり今日21日から夏休みに入りました。終業式ではこの長い休みはきちんと計画をたて有意義に使って欲しいと話しました。早速合宿に向かう部活動もあり24日からは夏期講習も始まります。
    この区切りにあたって各学年、各クラスから生徒、保護者のみなさんあての「通信」が発行されています。内容についてはもちろん教員一人ひとりが工夫して書いているのですが、そのタイトルにも教員の願い、希望が込められています。他クラスの通信を見ていただくのは難しいですが、タイトルだけでも「思い」は伝わると考えますので、いくつかご紹介します。

    シンプルに

    まずシンプルに「〇〇クラス通信」「学級通信」というタイトルのものがあります。もちろん見出し、本文の「自分を、鍛える夏」(1-A6)「高校最後の夏、君たちはどう過ごすか」(3学年)に教員のメッセージが込められています。

    「2回目を頑張ることができなければ、、、」という見出しが目を引きました(1-S2)。担任自身が恩師から言われた「一つのことを3回やる時には2回目でベストを出すべきだ」ということばを引き、3学期頑張ればいいではなく、2学期こそ一番頑張ろう、と呼びかけています。なるほど。

    「漢字熟語」

    「漢字熟語」では「凡事徹底」(2-A8)「一期一会」(1-S1)「克己復礼」(1-A8)「獅子奮迅」(3-A2)「日々進化」(3-A6)「日々是好日」(3-S2、3-A3)などは、学級目標をタイトルにしていたり、担任の願いをストレートに反映しています。

    「後生可畏」(3-S1)、これは難しい。辞書ひいてしまいました。「こうせいかい」と読み、若い人はまだまだ可能性を秘めているので敬うべきだという意味だそうです。3年のクラスにふさわしいし、漢語の学習にもなりましたね。

    「邂逅」(2-A1)、「かいこう」はクラスでの初めての出会いを大切にしたいと考えてタイトルにつけたそうです。「東雲」(1-A3)、「しののめ」は夜明け前、東の空がわずかに明るくなるころ、「入学してきた皆さんにぴったり」とのこと。

    漢語ではありませんが「凛と咲く花のように」(2-A5)、雨や強い風にも負けずに咲き続けてる花になってほしい、同時に「私(担任)自身も凛とした担任を目指したい」。

    花では「さくら咲くまで」(3-A4)、来年春の進路決定が楽しみです。

    英語・外国語

    そして外国語のタイトルです。

    「Departures」(2-I1)は「出発、出国、旅立ち」、「Wings」(3-A5)「SPECIAL」(2-S1)、「Assist」(2-A7)、「Future」(進路指導部通信)などは、それぞれのクラス生徒の状況をふまえて、「向かっていく、はばたいて欲しい」という教員の願いが感じられます。

    「Butterfly Effect 蝶の小さな羽ばたきが、時に大きな嵐となる」(3-A7)、これも思わず調べてしまいました。小さな変化が別の場所で大きな影響を持つ現象をさすそうです。進路実現を目指す3年生へのメッセージ、エールですね。

    「Animato」(1-A7)「アニマート」、イタリア語で音楽を表現する時に使われることば「元気に、生き生きと」、「Gran Alegria」(2-A2)はスペイン語で「大歓声」、「静かで落ち着いた日常もあれば大歓声にわくときもある、そんな1年にしましょう」と呼びかけました。

    最後にこれ。
    「Where there is a will、there is a way」(1-A1)、「意志あるところに、道は開ける」。アメリカ大統領、リンカーンのことばだそうです。クラス通信にとどまらず、生徒みなさんに贈りたいことばですね。

    1学期終了、夏休みを前に発行された学級通信の数々(一部です)

  • 2023.07.20

    「極楽征夷大将軍」--祝 直木賞受賞

    20日の朝刊各紙などで伝えられていますが、第169回直木賞に垣根涼介さんの『極楽征夷大将軍』(文藝春秋)、永井紗耶子さんの『木挽町のあだ討ち』(新潮社)が選ばれたとのこと。「極楽」はつい先日読んだところなので(直木賞候補として発表される前です)、こちらだけ少し感想を。

    あらすじについては、以下、2紙の記事が簡潔にして十分かと。プロの記事なのであたり前ですが。

    <毎日新聞7月20日朝刊>
    「向上心も野心もなく、周囲から「極楽殿」とからかわれた尊氏がなぜ天下を取れたのか。数奇な人生を弟・直義、重臣・髙師直の視点から描いた」

    <朝日新聞7月20日朝刊>
    「受賞作は室町幕府の初代将軍、足利尊氏の半生を弟の直義と側近の髙師直の目から描いた歴史巨編。野心も信念もなく、周りから「極楽殿」と陰口をたたかれていた尊氏が、激動の南北朝期を生き抜いた謎に迫る」

    日本の歴史の中で異論のない三つの幕府、鎌倉幕府、室町幕府、江戸幕府のトップが「征夷大将軍」という役職に任命される慣習があることは、いまさら説明の必要はないでしょう(これ以外にも鞆(広島県)に幕府があったといった説もありますが、とりあえずは教科書的にこの三つで)。

    それぞれの幕府の初代将軍、源頼朝、足利尊氏、徳川家康の3人を比べた時に、頼朝や家康の生涯は比較的わかりやすく、みずからがリーダーになるべく「野心」や「向上心」「信念」などを持って行動していたことがうかがえます。だからというわけではないでしょうが、それだけに小説、ドラマにもなりやすい。

    ところが尊氏はどうでしょうか。源氏の名門でありながらくすぶっていた足利氏でしたが、後醍醐天皇の鎌倉幕府打倒の呼びかけに応じて挙兵し、活躍するあたりまではわりとわかりやすい。ところが、鎌倉幕府が倒れた後に後醍醐天皇政権と相いれなくなり、別の天皇を擁立して対立、後の南北朝対立が始まります。

    そこに、弟の直義、重臣の髙師直とその一族、もともと足利氏と関係が深く関東で力を持っていた上杉氏、さらには尊氏の子らが敵味方に分かれあるいは時に手を組むなどしてあちこちで戦い続ける。敵対していたはずの南朝とも一時的に和解してしまう。小説やドラマにはしにくいでしょう。

    歴史研究での尊氏と直義との関係については、戦後の中世史研究をリードした佐藤進一先生(故人)の、二人の役割分担についての画期的な論考があり、その後、批判も出てきていますが、いまでも、この佐藤先生の考え方は引用され続けています。

    大胆に解釈すると、尊氏は軍事面、直義が政治担当といったくくりで、学術用語として尊氏は人(武士)を従える「主従制的支配権」、直義が「統治権的支配権」を担ったと説明されます。乱暴に言い換えると尊氏が武士の「リーダー」としてほかの武士を従える立場、その武士たちの領地の争いなど政治的なことは直義が仕切る、といったところでしょうか。

    垣根さんの小説も、この考え方から大きく外れてはいない印象ですが、肝心なところはほとんど直義、髙師直が仕切っているようにも読めます。もっといえば、尊氏はほとんど「お飾り」。それについて尊氏本人に何の不満もなく、直義に感謝し続けているあたりが「極楽殿」なのでしょう。ただ、尊氏の不思議な魅力というか裏表のないキャラクターに心酔してしまう武士も描かれていて、そのあたりに「リーダー」としての尊氏の素養を描いているようにも読めました。

    ちょっと飛躍した読後感としては、おれがおれがで前面に出るリーダーより、むしろトップが何もしない方がうまくいく、といった、日本の歴史の中で結構あるパターンがここにもあてはまるのかな、とも思いました。

    朝日新聞にあるように「巨編」で、結構なページ数。ちょっと中だるみ感もありましたが、おもしろく読めました。

    垣根さんの歴史ものとしては『信長の原理』『光秀の定理』があり、どちらも読んでいるはずなのですが、内容はすぐに出てきません。タイトルからして面白そうですよね。後日機会があれば。

    尊氏、直義の兄弟が対立、それぞれに各地の勢力が加担し、全国で戦闘が続いた状態は当時の元号を用いた歴史用語で「観応の擾乱(じょうらん)」と呼ばれます。そのものズバリのタイトル『観応の擾乱 』(亀田俊和、中公新書、 2017年)。サブタイトルに「 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い」とあります。

    佐藤先生の著作としてはこれ。論文でなく一般向けですが、内容は高度ながら実に読みやすい。名著だと思います。学生時代に読んで最近、買い直して読み直しました。
    『日本の歴史 9 南北朝の動乱 』(中公文庫、1974年、改版2005年)

  • 2023.07.19

    教員も学びます

    夏休みを前にした19日、校内で金融教育に関する研修を行い、教職員が金融機関の専門家から学びました。

    学生・生徒がインターネットやSNSを通じていわゆる「もうけ話」に騙されたり、あるいは犯罪に加担してしまう例も増えてきています。

    金融教育の必要性が指摘されるようになり平成30年告示の高等学校学習指導要領でも、公民編で「資産運用にともなうリスクとリターン」について理解できるようにすることが大切とされ、また家庭編では「基本的な金融商品の特徴(メリット・デメリット)、資産形成の視点にも触れるようにする」と示されています。

    本校でも今後、より充実した金融教育を展開していくために、指導にあたっての基礎知識のおさらい、指導するうえでの注意点を確認するとともに、「貯蓄から投資への潮流」といった最新動向も学ぼうと、埼玉りそな銀行、りそなアセットマネジメント株式会社から専門家を招いてのセミナー研修会を持ちました。

    夏休み期間中は教員が個々に研修にでかけ、指導力の向上に努めます。生徒だけでなく教職員にとっても夏は学びの季節です。

  • 2023.07.18

    看護・医療系進学希望者向けの講座を開きました――18日

    まもなく夏休み、大学進学・進路実現にとって夏をどう過ごすかは重要です。3年生はもちろん2年生にも大学のオープンキャンパスに出かけるよう呼びかけていますが、校内でも進路選択の参考になればと18日、看護・医療系進学を考えている生徒向けの講座が開かれました。

    進路指導部の教諭が、看護・医療系の大学に進んだ先輩たちが多くいることを紹介しながら、医療従事者として働くにあたっての心構えは何かと、問いかけました。また、医療従事者にはコミュニケーション能力が求められるので、入試にあたっては面接や小論文が重視されることが説明されました。

    脳死や尊厳死、現代医療の抱えるさまざまな問題についての知識を持ち、自分の考えを伝えられるよう準備をしていくことも必要になってくる、などの話もありました。

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    講座会場は校舎群から少し離れた丘の上にある多目的施設 FVB(Future View Base)でした
    /熱心にメモをとっていました

    本校の進路指導についてはこちらをどうぞ

    生徒の進路実績・進路データについてはこちらから

  • 2023.07.15

    消えたことば その2

    「三省堂国語辞典(三国)」の改訂によって辞典から削除されたことばを集めた「消えたことば辞典」。ではこの三国の改訂作業はどう行われているのか。かっこうの本があります。

    『辞書を編む』(飯間浩明、光文社新書、2013年)

    飯間さんは「三国」の編集委員。第6版から第7版への改訂のタイミングで、辞書作りの現場を生き生きと描いています。

    三国を生み出した辞典編集者、見坊豪紀(けんぼう・ひでとし)の仕事についても当然とりあげています。そもそも辞典ができる時の話しまでさかのぼるときりがないのですが、やはりその仕事ぶりはすごい。見坊が集めたことば、その用例がカードで保存されているのですが合計145万語になるそうです。三省堂の倉庫に残っているそうです。

    これだけの中から、「三国」に載ることばの数は初版で約5万7000語、見坊生前最後の刊行になる第4版で約7万3000語、そのように厳しく選ばれて辞典に載っても、消えてしまうことばがあるわけです。

    飯間さんも街を歩いては新しいことば、その使い方をさがす「用例採集」がやはり辞書編纂、改訂の基本作業だといいます。それらをもとに、新しく載せることばを編集部の会議で時間をかけて議論し、決めていくと紹介しています。あわせて、削除することばも選ばれていくわけですね。

    『辞書の仕事』(増井元、岩波新書、2013年)

    増井さんは「三国」と並ぶ代表的な国語辞典「岩波国語辞典(岩国)」の編集者。同書によると、「三国」や「岩国」などの、小型の国語辞典の収録の語数は6万程度が標準だが、各出版社が語数が多い方がアピールできると考えて収録語を増やす傾向にあり、7万から8万語くらいを収めているものもある、と説明されています。

    さらに、5万から6万近い日常基本語のレベルでは辞典による出入りというのはまずない、と書かれているので、新しいことばの採用と削除はかなり限られた範囲で行われていることになります。

    そんな中でも「三国」は新しいことばを積極的に採用することで定評があるようです。あたらしいことばを採用すると削除することばも多くならざるをえません。

    増井さんが自分の机に置いている辞典の一つが「三国」だそうで

    「編者見坊豪紀先生の現代語の観察が行き届いていること、生きのよい新しいことばと用法が、調査の裏付けをもって辞典に反映されていることは、誰も知っていました。私たちは、改訂版に何か新語を収載しようとするとき、そのことばが「三国」に載っていなければ、「三国」に先んじて収録することはないと考えたものです」

    「何か新しい語を載せるとすれば、まず「三国」が一番で、それにはしかるべきデータの裏付けがあるのだろう、ということだったのです」

    辞書編集者として他社の辞典、編集者への公平な評価、敬意が感じられます。「三国」の編集部にとっては結構なプレッシャーでもあるのでしょう。

    その増井さんが書いています。

    「辞典の職場で過ごした約30年間に、是非とも辞典の仕事がしたくて志願してやってきた、と公言する人には出会いませんでした」
    辞典編集の現場を描いた小説・映画『舟を編む』の主人公も確かそうでした。

    豊かな文化を維持するために辞典はなくてはならないものです。辞典編集にあたるみなさん、ご苦労さまです。これからもよろしくお願いします。

    余談ですが「消えたことば辞典」の編者は見坊行徳さん。見坊さん、ちょっと珍しい名前ですよね。そう、飯間さんも増井さんも言及している見坊豪紀のお孫さんだそうです。

    国語辞典、見坊豪紀については「辞典・辞書は何冊もっていますか」(5月27日)でも少し書きました。

  • 2023.07.14

    消えたことば その1

    「いやあ、うまい本の作り方だな」「たぶん全部は読まないだろうな」と思いながらも、即買いでした。

    『三省堂国語辞典から 消えたことば辞典』(見坊行徳・三省堂編修所編著、三省堂、2023年)

    「三国」の略称・愛称で知られる「三省堂国語辞典」は1960年に初版発刊、2022年に最新の第8版が発刊されましたが、その間に新しいことばが次々と生まれ、その中から辞典に加えられることばがでてくる。その一方で、載せられることばの数には限りがあるので、削除されることばがあるわけです。

    そのような「消えたことば」だけを集めて一冊の本にしてしまいました。削除されたことばだけ集めた本を作って欲しいという要望が寄せられていたそうで、それを受けてできた本なのでしょうが、そのことばが載っていた辞典の版に掲載された紙面のまま並べています。なので、見出し語や語釈(言葉の意味)、用例などの並び方や字形などが微妙に異なっているところに味があります。いやはや、すごい発想です。

    ここにでてくる消えたことばを個々に紹介していったらきりがありません。「消えたことば辞典」とありますが、基本はぱらぱらと読んで、「えっ、この言葉はもう辞典に載っていないのか」と愕然とし、あるいは「そうだろうな」と懐かしんで楽しむ本だと感じます。

    ただ、「もう載っていないのか」と愕然とすることばが多く見つかる人はやはり相応の年齢の人(私がそうでしょうね)、ここにでてくることばが「新語」になる人は当然若い人、ということになりますよね。

    さーっとみてやはりと思うのは「ニューメディア」や「パソコン通信」などコンピュータやIT関連のことば(特にカタカナ語)が目立ちます。また、ある時期学生生徒の間で使われていたことばやファッションなどが出てくると気になります。自身にとってなじみがあっても今の生徒の前で使っても通用しないでしょうから、気をつけたい、そんな利用の仕方もありかもしれませんね。

    さて、なぜどのように削除するのか。

    「小型国語辞書には、今の社会に広まり、かつ定着したと判断されたことばや語義が再録されます。その「今」から外れれば、改訂時(版が新しくなる時)に削除される運命にあります」とし、消える理由をあげています。

    ・そもそもの存在が確認し難い語
    ・時の流れで忘れ去られた語
    ・制度の変更などにより消滅した用語
    ・モノとして下火になったり需要が減ったりして存在感の薄れた語
    ・編集方針上ふさわしくないと判断されて削られた語

    などだそうです。

  • 2023.07.13

    野球部県大会2回戦 惜敗

    全国高等学校野球選手権埼玉大会で13日、本校は所沢航空公園球場での2回戦で城西大川越高と対戦しましたが、惜しくも敗れました。

    いったんはリードを奪ったものの追いつかれ、終盤勝ち越しを許しました。それでも最終回1点差に追い上げる粘りをみて、スタンドの生徒、保護者らから最後まで熱い応援が送られていました。

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    応援、ありがとうございました
  • 2023.07.12

    「自然」「もの」から歴史をみる その5

    「自然」や「モノ」を切り口に歴史を見る手がかりになる本をいくつか紹介しました。ズバリ「〇〇〇の歴史」のようなタイトルがついているとわかりやすいですよね。書棚から目についたものを抜いてきました。結構古い本もあるのですが、その内容は充実しています。

    学校での世界史の学習にも役立ちます、というすすめ方がいいかどうかはわかりませんが、世界史への興味をかきたてるのは間違いないと思います。

    『時計の社会史』(角山栄、中公新書、1998年)

    奥付をみると1994年初版、98年10版なのでかなりのベストセラーですね。機械としての時計の技術的発達という「時計そのものの歴史」と同時に、時計によって社会がどう変わってきたかを考察します。

    例えば、正確に時を刻むことができて労働時間をきちんと決められる、労働時間に応じた賃金が支払われることが産業革命から資本主義の発達には欠かせない条件であったり、地方ごとにバラバラだった時刻の決め方を標準時で統一し、きちんとした時計があってきめ細かな列車の運行が可能になり、鉄道が発達する、観光などが盛んになる、といった具合。

    筆者あとがきを引きます。

    「すなわち時計という機械の歴史ではなく、時計がつくる知的で抽象的な人工の時間が人々の生活とどう関わってきたかを、比較社会史的に考えてみたかった」

    『茶の世界史』(角山栄、中公新書、2001年)

    同じ筆者でやはり中公新書、こちらは1980年初版で手元にあるのは2001年26刷、大ベストセラーですね。本をチェックすると結構きれいなまま、きちんと読んだかな、積読かも。

    『ジャガイモの世界史 歴史を動かした「貧者のパン」』(伊藤章治、中公新書、2008年)

    これも中公新書、「〇〇の世界史」と意識して発刊しているのですね。こちらには2008年に読了の日付が書き込まれていて、アンダーラインもかなりひかれています。

    南米で生まれたジャガイモが世界に広がり、「ジャガイモは歴史の曲がり角や裏舞台で大きな役割を果たしている」として、フランス革命、米国大統領、産業革命、足尾鉱毒事件などがあげられています。
    アイルランドの農民はジャガイモを主食としていたものの飢饉で多くのアイルランド移民が米国に渡った。その子孫が第35代米国大統領のJ.F.ケネディ、といったように。

    以下のような部分に赤線が引いてありました。

    「ジャガイモのヨーロッパでの普及は、迷信の壁に大きく阻まれた。ジャガイモがもたらされるまで、ヨーロッパの多くの地方には、地下の茎から取れる食用植物はなかった」
    「さらにキリスト教文化圏ではジャガイモは聖書に出てこない食物。これを食すれば神の罰が下るとの文化的偏見も加わる」

    『砂糖の世界史』(川北稔、岩波ジュニア新書、2006年)

    1996年1刷、手元にあるのは19刷、これも長く読み継がれていますね。ジュニア新書ですが、筆者の川北さんは「世界システム論」を提唱したウォーラーステインの研究者として内外で高い評価を得ている先生なので、面白くないはずがありません。

    世界中の誰からも好まれる砂糖を川北さんは「世界商品」と名付けます。世界中のどこでも必要とされるので、それを独り占めできれば、大きな利益をあげられる、だから「16世紀いらいの世界の歴史は、そのときどきの世界商品をどの国が握るか、という競争の歴史として展開してきた」。

    モノで歴史をみる、を大上段に掲げてあれこれ書いてきましたが、『砂糖の世界史』のエピローグ「モノをつうじてみる世界史--世界史をどう学ぶべきか」で川北さんがわかりやすくまとめてくれていました。

    「モノをつうじて歴史をみることで、どんなことがわかるのでしょうか」
    「ひとつは、そうすることによって、各地の人びとの生活の具体的な姿がわかります」
    「もうひとつの特徴は、世界的なつながりがひと目でわかるということです。とくに世界商品の場合は、まさしく世界に通用した商品ですから、その生産から消費までの過程を追うことで、世界各地の相互のつながりがみえるのです」

  • 2023.07.11

    「自然」「もの」から歴史をみる その4

    「銀」の話の続きというわけではないのですが、メダルの色でおなじみの「金銀銅」すべてをまとめて教えてくれる本があります。

    『金・銀・銅の日本史』(村上隆、岩波新書、2007年)

    本の帯に「石見銀山、世界遺産に登録」ともあるので、やはり石見銀山を意識した発刊でしょうか。

    まず「金」です。13世紀のイタリアの冒険家、マルコ・ポーロがその著作「東方見聞録」で日本を黄金の国と呼んだ、つまり「金」が豊富にあることを指しているわけで、仏像や建築に金がふんだんに使われていることを考えても違和感はないし、金鉱山(金山)もいくつもあったことがあげられます。

    「銀」については、石見銀山の例をあげれば、日本が銀の国でもあったことはわかりやすいですね。「銅」では弥生時代から青銅製品が造られていたことを示し、筆者の村上さんは「金・銀・銅を筆頭に、日本はかつて世界でもまれな金属の国だった」とまとめています。

    この三つの金属が国内でどのように産出され、何に使われ、さらにそれが社会経済をどのように変えていったのかが時代を追って説明されています。石見銀山の紹介の章は「銀の王国 石見銀山--世界をめぐった日本の銀」と見出しがついています。これだけで石見銀山の位置づけが十分わかります。

    江戸時代、列島で使われていた貨幣は江戸が金貨、上方(近畿・関西)が銀貨中心であることはよく知られていますが、この理由として「早くから拓けた銀山が西日本に多いことや、日本では古くから銀が使われており、先に文化が開けた上方のほうが銀を中心に経済が動き、関ケ原の合戦以降に金貨ができたことが江戸で金を中心とする要因となった」と説明されています。

    気になるのは「かつて金属の国だった」ということですよね、現在、金属の国といった印象を持つ人はほとんどいないでしょう。説明されてきた金、銀、銅山はほとんどが休山、廃鉱となっていて、金銀銅など多くの鉱山資源は輸入に頼っています。

    村上さんは、鉱山は地球から金属を取り出すことで、実は地球環境保全の立場とは相反する行為であり、「地球環境を犠牲にして人類は発展してきたといっても過言ではない」と注意喚起します。

    IT機器の普及などもあって金銀の需要は減っておらず、すこし前、携帯電話やパソコンを廃棄するにあたって機器の内部で使われている金属を回収して再利用することが「都市鉱山」などと言われました(最近はあまり聞きませんが)。地球環境とのかねあいで限りある資源を有効利用しようということで、この著作でも触れられています。大事な視点ですね。

    『世界史を変えた新素材』(佐藤健太郎、新潮選書、2018年)

    「新素材」ときくと現代の科学技術に結び付いた「モノ」を思い浮かべがちですが、歴史の中でその「モノ」が発見されたり開発された時は「新素材」であったわけで、この本で最初に取り上げられている新素材は「金」です。

    アンダーラインが引かれているところを見直すと「現在までに採掘された金の量は、世界中全て合わせても、オリンピックプール三杯分ほどでしかない」、えっ本当かと疑ってしまいますが、筆者の佐藤さんもこう続けます。「そんなバカなと思うような数字だが、金は水の二十倍近くも重たいため、重量のわりに嵩(かさ)が非常に小さいことも原因だ」と。
    確かに金はかなり薄く延ばすことが可能で、京都・金閣寺の外壁には金箔が貼られていますが約20キロもの金を使いながら金箔の厚さは約0.5マイクロメートルだそうです。

    このほかに取り上げられる新素材の「陶磁器」や「鉄」などは想像がつくとことですが、氷河期や寒冷期を人類が生き延びることができた寒さに強い皮膚に欠かせない「コラーゲン」は「動物が生み出した最高傑作」と評価されています。なるほどですね。

    このほかに「文化を伝播するメディアの王者」として「紙」がとりあげられるほか「炭酸カルシウム」「絹」「ゴム」「プラスチック」などが列挙されています。

    佐藤さんは「木材や陶器のように、これひとつであらゆる用途に対応できるといった材料は、もうそうそう出てこないと思える。すでにプラスチックがそうであるように、性質の異なる材料が多数創り出され、用途に合わせて使い分けられる形が増えていくことだろう」と歴史を振り返り、これからを見通しています。