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  • 2023.04.25

    共感

    新作を発表した村上春樹さんのインタビュー記事(4月20日毎日新聞夕刊)から。

    現代の社会では、SNS(ネット交流サービス)で飛び交う短い言葉が人を動かし、社会や政治を揺るがす、という記者の問いかけに村上さんは
    「そういうのって、やがて消えていくと思うので、そんなに心配はしていません。時間がたてば、本当に実のあるものだけが残る」

    「長い時間性の中で何かを語る。何かを与える。それが物語なんですよね。その与えられたものも、すぐには腑分けできず、何日か、何カ月か、何年か考えてやっとわかることがある。ぼくはそういうものの力を信じたい。センテンス一つや二つで説得する社会には興味がないんです」


    新聞記事や雑誌記事などで心に残った、印象的な言葉などを切り抜いて保存しています。アナログの「スクラップブック」です。

  • 2023.04.24

    寄贈された「ツツジ」が咲き始めています

    多目的施設「FVB(Future View Base)」の改装に伴い「東野高校同村会(同窓会)」から寄贈いただいた「ツツジ」が咲き始めています。

    「FVB」はキャンパス正門をくぐって中央広場から池の向こうの丘上に建つ、もともとは食堂だった建物です。生徒の昼食の取り方が変わりつつあるなかコロナ禍が重なり、一方で講習の教室や生徒の自習スペースの確保、クラブ活動の成果発表の場を求める声が高まり、昨年度、外観は維持したまま改修改装工事を行いました。

    建物の前には以前から「ツツジ」が植えられていましたがほぼ枯れた状態だったため、憂慮した同村会が寄附を申し出てくれました。造園業を営む卒業生が株の手配から土おこし、植え込みまで行ってくれました。

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  • 2023.04.22

    保護者会ご出席 ありがとうございました

    22日の今年度第1回全学年保護者会にご来校・ご出席いただき、ありがとうございました。

    各学年が会場を異なっての同時進行のため、私を含めて教職員の出入りがあわただしく、落ち着かないところもあり、また私自身にとっても初めての保護者会ということで至らぬ点が多々あったかと思います。引き続きよろしくお願いします。

    学年全体の集まりでごあいさつさせていただきました。学年が異なると直接参考になる話しも少なくはなると思いますが、「あいさつ」の概要をお伝えします。

    1学年全体会あいさつ

    先日の入学式にはたくさんの保護者のみなさまにもご出席いただき、誠にありがとうございます。遅くなってしまいましたが、改めて御礼申し上げます。

    1年生はその後、校内での上級生・在校生との対面式、健康診断などが続き、授業が始まりました。また、部活体験会にも1年生のみなさんは積極的に参加しているようです。昨日までは汗ばむほどの陽気で、窓の開けられた1年生の教室から歓声が聞こえていました。来週月曜には校外学習があります。一段とクラスの中での親睦が深まるものと願っています。

    さて、入学式では、保護者のみなさまへのお願いとして、子どもたちと少し距離を置いて接してほしい、という話をさせていただきました。

    私のような新米校長が思い付きでいう話ではなく、多くの先輩方が同じような話をしています。例えば「子どもとの一定の距離感が必要、近すぎると良い面も見えなくなりがち」。あるいは、「こどもたちの良きサポーターであってほしい。自分の進路を決めて、前に進んでいくのは生徒たち、保護者が誘導するのは避けてください」とも。

    もうひとつ、子どもたちへの向き合い方として、私が大変感銘を受けた考え方、言い方があります。それは「子どもを水平に比較してはダメ、垂直に比較してください」ということです。

    水平とは自分自身にとっての右や左、つまり周りにいる友人たちを指します。垂直とは自分自身を中心とした上下、この場合は自分にとっての過去、現在、未来ということでしょう。水平に比較する、つまり周りの人と比べない、だれだれはこういう成績だったのに、あの人はこんなものを持っている、といった比べ方。

    そうではなくて垂直に、その子の過去と比べてどうなのか、半年前、1年前の様子と今の様子を比べ、成長していればそれでいい、成長したところを見つけ、拾い上げてほめることが大事だということです。

    本校が力を入れている英語教育、その一つとして英語検定の全員受検があります。検定というものの特徴の一つに、自分が努力すればストレートに結果につながる、ということがあります。入学試験は競争相手がいますね、合格者の数があらかじめ決まっていれば、自分が相当努力しても結果につながらない、ことがままあります。

    それと比べて、検定はある基準に達すれば合格となります。極端に言えば、本校で受検した全員が目標の級に合格ということもあるのです。学校としてはそうあって欲しいと願っているわけです。入学試験は水平での比較、検定は垂直での比較、つまり前の検定の時より勉強して努力して結果がでる、その結果が垂直での比較と言ってもいいでしょう。

    子どもたちが悩むのは、あせったり、あわてたりするから、人と比較するからあせったり、あわてたりする、比べるのは自分自身、昨日の自分を超えられたかどうかが大事、そこを褒めてあげる、という言い方もできるでしょう。

    さて、今年度の学校の基本方針の一つとして、保護者のみなさまに学校に来ていただく機会をできるだけ増やそうということを掲げています。保護者のみなさまを対象に本校教員が、生徒向けの授業とは一味違ったテーマで語る講座を開いていく予定です。学校にぜひ足を運んでいただきたいと言いましたが、お忙しい中なのでオンラインでの参加も検討しています。申込方法などはおってご連絡しますが、多くの方の参加をお待ちしております。

    2学年全体会あいさつ

    高校3年間真ん中の2学年は難しい学年とよくいわれます。高校生活を1年経験してだいぶ慣れてきた、余裕が出てきた。部活動では3年生が春先から引退していくので実質的にリーダーになる、これは自覚を持つということで大事なことだと思いますが、一方で勉強はどうなのか。進路実現・大学受験はまだ少し先で実感がない、緊張感はない。逆に言えば余裕があって自分のやりたいことにじっくり取り組める、うらやましい時期であるのですが、一方で何となく過ごしてしまう、「中だるみ」などと言われます。

    A5組の学級通信で担任が「中だるみ」ではなく「中はずみ」の1年間にしていきましょう、と書いていました。このクラスだけではもったいないので、紹介します。

    その「はずみ」に大きく関わるのが修学旅行です。コロナ禍で控えていた海外、カナダも含めてほぼ同じ時期に3方面に、クラス単位ではなく、一人ひとりにそれぞれ希望するコースを選んでもらうという方式です。それだけに学校としても万全の体制で臨みます。前校長の北村参与、教頭、主幹、学年主任が責任者となって引率します。

    始業式では生徒たちに、旅行の準備について少し話をしました。旅行で初めてでかけたところ、そこで目にするもの、出会うもののすべてが新鮮で驚きなのは間違いはない、でも事前にしっかりと準備をしておくと、体験が何倍も奥深くなります。旅行がいっそう充実したものになります、と。

    その準備ですが、まずはガイドブック的なものを手にとることでしょう。もちろん、第一歩はそれでかまいません。そんな中から自分が特に興味を持ったことについて本やインターネットで詳しく調べる、そんな作業をしてみる。このことは、修学旅行の準備にとどまらず、よく言われる「調べ学習」そのものであり、これからぜひ身につけていきたい「学び方」でもあります。

    さらに欲張ったお願いをすると、それぞれの旅行先を舞台として小説や物語もぜひ手に取って欲しい、ということがあります。もちろんフィクションなので、そこから直接的に旅行にプラスになる知識が得られるわけではありませんが、小説家がその鋭い感覚で感じ取った現地の空気感から、例えば北海道の広大は大地をどう描くのか、沖縄の海をどう表現するのか、そんなことを頭に入れて実際に現地に立ってみると、感動がまた違ったものになると思います。ぜひ保護者のみなさまからそんなアドバイスをしていただけたら願います。

    また、ご家庭でも、それぞれの目的地に旅行の経験がおありでしたら、ぜひ話をしてあげてください。旅行先に関する本を読んで感想を話し合うのもいいですね。

    もうひとつ、2年生は将来の夢に向けての進路決定がいよいよ具体的になってきます。学年からはこの夏休みに実際に大学に足を運び、大学とはどんなところか、それを感じとって欲しいので、オープンキャンパスに出かけるよう話があると思います。ぐっと大学が身近に感じられるようになること間違いありません。

    3学年全体会あいさつ

    すでに進路指導部から話がありましたが、私も進路実現について話します。

    始業式で3年生にはこう話しました。第一志望を最後まで貫いてほしい、と。これはぜひご家庭でも共有していただきたい。

    その志望はもしかしたら高い望みかもしれません、ただ夢を持って受験勉強をする過程で、みずから目標をさげる必要はありません。強い希望が日々の学習を後押しします。特に一般選抜を考えている生徒さんの試験は来年1月から2月です、この成長過程の子どもたちは本当に最後まで成績は伸びます。結果的に第2・第3希望の大学になったとしても、自分の目標に向けて努力したことは決して無駄にはなりません。

    このことについて保護者のみなさま、ご家庭にお願いしたいのは、とにかく「見守って」ほしい、ということです。あれこれ口をだしてくなる、日々の成績を見てつい一言いいたくなる、じっと我慢してください。そして、お子さんが掲げている第一志望について「そんなところは無理だ」「変えてもいいんじゃない」は禁句です。子どもたちは不安を抱えて勉強しています。そこで身近にいる信頼する保護者から「志望を変えてもいい」と言われたら飛びつくでしょう。

    模試の成績が出てきます。志望校への合格可能性がAから始まってEまで判定されます。Aが一番高い、Eがついていたらやはりショックです。でもそんな時も「いい(good)判定じゃない」と笑い飛ばして、励ましてあげてください。

    高校受験までは親の出番がいろいろありました、大学受験ではぐっと減ってしまいます。受験生がいると家の中がなかなか難しい空気になるということもわかります。そんな中、保護者のみなさまがいつも通りにお子さんたちに向き合い、見守ることが大事です。3年生のこの1年間の経験はご家族にとっても貴重な経験になり、家族のきずなを一層深めることはまちがいありません。

  • 2023.04.21

    入部勧誘のポスターが楽しい!

    本日21日(金)は「模試の日」。1年生にとっては高校入学後、東野生となって初めての模試です。また全員が所持するiPadを使っての試験で「初めて尽くし」です。

    その1年生ですが、クラブ活動の体験入部をしながら自分にあった部活探しの真っ最中。「迎える側」も勧誘ポスターをつくって呼びかけます。パソコンのデザインソフトなどを巧みに使ったビジュアルなものもある一方、手作りのポスターもなかなか味があります。力作揃いです。

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    保護者のみなさまへ

    明日開催の今年度第1回全学年保護者会、お待ちしております。各学年で全体会、学年会、クラス懇談会などの順番が異なります。当日学校でご案内します。なお、上記各クラブの入部勧誘ポスターが職員室棟西側のカベに並んでいます。こちらもぜひご覧ください。

  • 2023.04.20

    海岸清掃活動が紹介されました

    本校が学校全体で取り組んでいる「東野SDGs」、今年1月に3年生が神奈川県・湘南海岸で清掃活動をした様子が、海岸美化団体のホームページに掲載されてました。

    引率した藤井千栄子教諭(昨年度3年担任、今年度1-A3担任、国語科)から教えていだきました。

    こちらからどうぞ

    「東野SDGs」についてはこちらもどうぞ。学校紹介の動画で活動内容などを紹介しています。

  • 2023.04.18

    @図書室

    /図書室に校長ブログでとりあげた本のコーナーをつくっていただきました
    /図書室では新学期特集として勉強に役立つ本を紹介しています

    東野高校の図書室では本の貸し出しはもちろん、新聞の閲覧コーナーや生徒の自習スペースも用意されています。また新聞の記事データベースも利用でき、調べ学習などでも活用されています。

    図書館など本校の施設についてはこちらをどうぞ

  • 2023.04.17

    ヒッタイトに魅せられて

    1学期の授業が本格的に始まりました。2年生の世界史の授業がこの時代にさしかかっている、ということで、最近読んだ中でのお薦め本の紹介です。

    ヒッタイトに魅せられて

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    トルコで発掘調査を続けるアナトリア考古学者・大村幸弘さんに、ヒッタイトを舞台にした作品がある女性漫画家・篠原千絵さんが話を聴くという、思いもよらなかった本です。

    トルコの遺跡で一生涯をかけて発掘にあたり、国際的にも高い評価の研究成果をあげている日本人学者がいることを、恥ずかしながら知らなかったし、ヒッタイトをテーマにした漫画、いよいよ知りませんでした。タイトル通り「ヒッタイトに魅せられた」2人のやりとりに、ぐいぐいと引き込まれます。

    さてヒッタイト、辞書では「ヒッタイトは民族名で紀元前1750年ごろ、トルコ・アナトリア地方で鉄と重戦車を駆使してエジプトと古代中近東世界を二分するほどの帝国を築いたが、前1200年ごろ滅びた」などと説明されています(手元にある「角川世界史辞典」によりましたが、なんとこの項目の筆者はこの大村幸弘先生でした)。

    突然のように興って、当時最先端技術でもあった「鉄」をあやつって大帝国となりながら、あっという間に滅びてしまう。その原因もよくわからない、そんな「謎」の民族、国家に「魅せられた」2人のやりとりがおもしろくないはずがありません。

    大村先生は研究者を志し、トルコ・アナトリアで発掘を始めるときに、恩師から「文化編年を目指さなければならない」とアドバイスを受けます。

    遺跡の発掘というと、研究者の自分の専門とする分野、興味関心の強い時代に関わるところだけを発掘の対象とすることが多いなかで、ひとつの遺跡を、上から下まで丹念に掘り下げて歴史の積み重なりを正しくとらえ、当時の世界を復元し、歴史の流れを正しく把握することが大切だと教えられた、と振り返ります。途方もなく時間のかかる仕事、考古学者が一生をかけて取り組む価値のある大仕事なんだとも。

    大村さんが発掘を始めたころ、他に日本人研究者はおらず、トルコでの発掘調査の中心だったドイツの研究者が「日本人が(発掘)やるんだって? まあ、2,3年続けばいいほうだ」との陰口を叩いているのをたまたま聞いて、「死ぬまでやってやるって、心底そう思いましたよ」。

    この決意があったからでしょう、発掘調査を認めてもらうためのトルコ政府や地方自治体との交渉、ヨーロッパを中心にたくさんの国の研究者の真剣勝負の場である学会での発表、さらには実際に発掘現場で作業をしてくれるトルコの人たちとの日常でのやりとり、後進の育成などが語られていきます。

    このような大村さんの仕事ぶりは、将来考古学者になりたいと考えている若いみなさんにとって大いに参考になるし、励みにもなります。また、考古学、歴史学などにとどまらず、海外で働くということを考えていくうえでも、示唆にとんでいます。

    ヒッタイトが「鉄」によって大帝国となる、突然のように滅びる、そこについては大村さんの長年の研究に裏打ちされた説明は説得力があります。「アナトリアの高原は夏から秋にかけて一定方向から強い風が吹き続ける。鉄を生産するには高温が欠かせないが、フイゴだけでは不十分、この強い風を利用した可能性が高い」と推測します。

    そのうえで、青銅器から鉄器への移行とは、人類が生んだ最大級のイノベーションだったといっても過言ではない。鉄はいまの核兵器に匹敵するイノベーションだったはず。核兵器を持ったということで、エジプトがヒッタイトを対等な大国として扱わざるをえなくなった」と、現代になぞらえて説明しています。

    「アナトリアのことを世界史のへそと表現します。東西から文明が次々に去来し、それが世界史としてアナトリアの大地に積み重なっている。言語や文化の異なる多様な集団を包摂しなければ統一国家がつくれない場所だった」

    現代のトルコや中近東の国々・地域の課題でもありますね。

    このブログのテーマ別にカットを用意しました。本を紹介する時は「今日の付箋」。
    本を読んでいて気になったところに付箋(ふせん、ポストイット)を貼ることがありますよね、それにちなみます。デザインは海老根捺稀先生(美術、2-A3担任)です。この後も次々と登場します。
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  • 2023.04.15

    ピッチクロックその後--続・入学式式辞 その3

    入学式式辞にいつまでもこだわっているようで恐縮です。

    アメリカメジャーリーグで大谷翔平選手の連日の活躍が伝えられています。そんなニュースの中に、大谷選手が「ピッチクロック対策をしている」というものがありました。

    式辞で紹介したのは投球間隔の制限が走者なしの場合は15秒以内というものでしたが、新ルールでは走者ありの場合は20秒以内、打者が準備を整える前に投手がセットポジションに入るのも違反、などいろいろあり、大谷選手は誤解されそうな投球フォームを修正したようです。

    この新ルールがどのくらい広がっていくのか、日本のプロ野球にはすぐに導入されないとしても、ワールドベースボールクラシック(WBC)で採用されれば日本代表の選手も対応を迫られる、などの見方もあり、また反対意見も見受けられます。

    式辞の準備の時は思い浮かばなかったのですが後日、スポーツノンフィクションの名作を思い出しました。山際淳司「江夏の21球」です。プロ野球日本シリーズの名勝負の中でも特筆される試合のハイライトを、それまでにない切り口で描いた、その後のスポーツノンフィクションのスタイルを変えた作品と評価されています。

    /「江夏の21球」が収録されている「スローカーブを、もう1球」。「野球雲の見える日」は1986年の作品集
    1979年のプロ野球日本シリーズは広島対近鉄、3勝3敗で迎えた大阪球場での最終戦、広島のリリーフエース江夏豊投手が広島1点リードで7回裏、マウンドに上がった。ところが9回裏、ヒット、盗塁悪送球、満塁策をとって無死満塁の大ピンチを迎えてしまう。

    この回の攻防を、江夏投手はもちろん近鉄の打者などのインタビューで構成した作品が「江夏の21球」。単に江夏投手の配球を追うだけではないドラマが描かれていますが、書くとこれから読んでみようという方の意欲をそいでしまうので、やめておきます。

    結果的に江夏投手が胴上げ投手となった9回裏に江夏投手が投げた球数が21球、それがタイトルの所以で、その9回裏に費やした時間は約26分、と書かれています。投球間隔時間は敢えて計算しません。

    もちろんいまの野球とは異なる要素がたくさんある時代ではあります。「とはいえ」です。山際は「江夏の一球一球をめぐって広島、近鉄両ベンチ、そしてグラウンドに立つ選手のあいだをさまざまな思惑が交錯した。野球とは、あるいはこの様々な思いが沸き立ち浮遊して交錯するところに成立するゲームであるのかもしれない」と書いています。

    「江夏の21球」

    ナンバー誌(Sports Graphic Number、スポーツ・グラフィック・ナンバー)の1号(1980年4月20日号)に掲載、その後、山際の作品集「スローカーブを、もう一球」に収録。私自身はナンバー誌で読んだかどうかは記憶がないのですが「スローカーブ」の方は、手元にある単行本(角川書店)の奥付を見ると「昭和五十七年(1982年)五月十日 四版発行」となっています。とにかく新米記者のころに読んでとても強い印象が残ったことは鮮明に覚えています。「こういうのもありか」と。

    ナンバー誌創刊時の編集長が振り返っています。

    「新しい雑誌なんだから新しいスポーツライターを育てて下さい。スポーツノンフィクションという、まだまだ未開拓のジャンルに切り込んでみようとという若手の文筆家は必ずいる」というアドバイスをもらい、スポーツとはあえて無縁のライターだった山際淳司を起用した。

    江夏投手が9回裏に投げた21球について、ビデオを見ながら1球ずつ「なぜこの球は内角カーブのストライクなんですか」「捕手のサインに一度首を振った後、ストレートを投げたのはどうしてですか」……と、素人風の質問を続けてみよう、ということにした。その成果が「江夏の21球」である。

    /ナンバー誌のベストセレクションⅠ(左)、編集長の話は「はじめに」から。「ナックルボールを風に」(角川文庫)には「江夏の21球」の後日談ともいえる「エース」という作品が収録されています

    ネット販売で検索すると「江夏の21球」のタイトルで2017年、角川新書から出されているようです。こちらの方が手には入りやすいでしょう。

  • 2023.04.14

    続・入学式式辞 その2

    朝日新聞の14日付朝刊「天声人語」、各地の大学入学式での学長の式辞のいくつかが紹介されています。
    広島大学の学長はタイムパフォーマンス時代に対する懸念を示したそうです。すぐに大学ホームページで読ませていただきました。

    越智光夫学長の式辞全文が掲載されています。こちらから

    私のつたない式辞と比べるつもりは毛頭ないですが、「タイパ」の流行を心配する方がいらっしゃることは心強いです。

  • 2023.04.13

    続・入学式式辞

    東京大学などが全国の小中高生に学習状況の変化などを尋ねた調査結果の紹介記事で(12日の毎日新聞朝刊)、「勉強時間の長さは、成績との相関が弱かった。やみくもに時間をかけるより、勉強法を身につける方が成績向上の早道と言えそうだ」とまとめられていました。

    長く時間をかければ必ずしも成績があがるものではない、とも読めるので、「あれれ」とちょっと困惑してしまいました。というのも、10日の入学式式辞で次のような話をさせていただいたからです。

    若い人たちの間で「タイムパフォーマンス(タイパ)」という考え方が広がっている、「タイパがいい」といった使い方で、短い時間で効率よく成果を得る、結果を出すことを意味する。しかし私は高校での日々の学習や受験勉強、部活の練習には「タイパがいい」方法はない、遠回りを心配せずに、じっくりと時間をかけていいと考えている、と。

    もちろん短い時間で効率よく学習できれば、同じ時間内で多くの教科・科目の学習ができるので、それに越したことはないでしょう。ただ、まずはじっくりと時間をかけて学習し、その過程、積み重ねからより効率のいい学習方法に気づき、身につけていくということでしょうか。

    入学式の様子については学校の「新着ニュース」で詳しくお伝えしています。こちらをどうぞ

    参考にした本

    「映画を早送りで観る人たち」(光文社新書)
    「タイパ」を広く知らしめる役割を果たした本の一つでしょう。「2時間の映画は2時間かけて観てもらう想定でシナリオが描かれています……」というプロ脚本家の嘆きを紹介しながらも、タイパ重視の若者たちの声を丹念に集め、「芸術」は鑑賞するが「娯楽」は消費する、情報収集に近い、タイパを重視する若者たちは「観たい」のではなく「知りたい」のだ、ととらえている点は「なるほど」。